2009年01月21日(水) 09時10分
“偽装チラシ部数”で稼ぐ山陽新聞を市民が告発(MyNewsJapan)
山陽新聞社が、系列の販社である山陽新聞岡山販売への新聞偽装部数(押し紙)を減らす一方、同じく系列の山陽折込広告センターの折込広告部数表にABC部数を上回る架空の部数を書き込み、必要な折込チラシ数を実態よりも水増しすることで、本来は不要なチラシ料金を騙し取る新種のビジネスモデルを構築している疑惑が発覚した。
税金で運営される県の広報紙『晴れの国おかやま』の折込部数は、実売部数はおろかABC部数を約4万5千部も上回って刷られ、料金が支払われていた。
岡山市の住民らが、水増しした折込チラシを回収している現場を、岡山市の住民らがビデオカメラに撮影することに成功した。映像には、新聞に折り込まれるはずのチラシを段ボールに詰め、トラックに積み込んで、シートで外見を隠して運び去る場面が記録されている。
ここで公開する画像は、ここ1年ほどの間にビデオ撮影した場面を再編集したもの。最初の場面は、販売店で男性がチラシをセットしている映像だ。余ったチラシを段ボール箱の中へ投げ捨てる。チラシで一杯になった段ボール箱は、回収業者のトラックへ運ばれる。水増しされた広報紙や政党のチラシも画像に収まっている。
ちなみに回収業者は「誓勇(せいゆう)コーオペレーション」という会社である。トラックを尾行したところ、岡山市の郊外の辛川市場という地域に集積場があることが分かったという。それは普通の民家の倉庫だった。
映像を公開しよう。
http://jp.youtube.com/watch?v=XiBCrPjo5lE
チラシの水増し行為を検証した結果、山陽新聞には驚くべきビジネスモデルがあることが判明した。山陽新聞の販売店では、新聞の搬入部数をはるかに上まわる数量のチラシが搬入されているのだ。たとえば次のような例が観察できる。
《2005年9月、岡輝販売センター(岡山県岡山市)の例》
増紙目標部数(新聞の搬入部数): 1875部
チラシの搬入枚数 : 2400枚(NTTコミュニケーションズ)
増紙目標部数というのは、実質的には新聞の搬入部数のことである。目標の部数を定めて、それをノルマとして搬入するのだ。したがって実配部数はもっと少ない。岡輝販売センターの元店主によると、実配部数は1700部ぐらいだったという。
しかし、NTTコミュニケーションズのチラシは、2400枚も入っている。700枚も捨てられていた可能性があるのだ。
チラシの搬入枚数を、新聞の搬入部数に準じたものにするのであれば通常のビジネスモデルだが、山陽の場合は、チラシの枚数が新聞の搬入部数を、はるかに上まわっている。
なぜ広告主がチラシの水増しに気づかないのかというと、折込センター(代理店)が作成する折込広告部数表にABC部数を上回る架空の部数が書き込まれているからである。
山陽新聞のチラシ詐欺により被害を被っているスポンサーを割り出してみた。最初に焦点を当てるのは、公共チラシのスポンサーである。公共チラシは税金で制作されるので、水増し行為は特に重大な問題である。
調査対象にした販売店は、岡輝販売センターである。2005年度における商取引の記録からいくつかの広告主をピックアップしてみよう。増紙目標部数とは、実質的には搬入部数のことで、いずれも1870〜1875である。
【広告主とチラシ枚数】
晴れの国おかやま(3月) 2350
中国財務局(6月) 2400
自民党(9月) 2200
民主党(9月) 2150
岡山財務事務所(11月) 2400
岡山県環境管理課(11月)2400
上記のリストでも明らかなように、搬入される新聞の部数よりも、チラシの枚数の方がはるかに多い。実配部数は1700部ぐらいだったというから、膨大な量のチラシが破棄されていたことになる。
自民党と民主党をリストに入れたのは、両党が政党助成金を受けているからだ。従って公的な要素がある。また、「晴れの国おかやま」は月刊である。
同じように折込チラシ水増しの被害にあっているブランド企業には、次のような社がある。05年から06年にかけた岡輝販売センターの書類から割り出した。新聞の実配部数は1700部程度。新聞の搬入部数は時期によって変動はあるが、約1870部である。
下記の企業は、2200枚から2400枚のチラシを発注している。いずれも新聞の実配部数は言うまでもなく、搬入部数をはるかに上まわっている。
カネボウ、ダイエー、NOVA外語学院、イトーヨーカドー、オメガ、NTTコミュニケーションズ、バーミヤン、トヨタカローラ、コナミスポーツ、住友信託銀行、マルイ、AU、中国電力、ミスタードーナツ、ドコモショップ、ヤマダ電機
チラシのスポンサーはどの程度の金を騙し取られているのだろうか。山陽新聞に『晴れの国おかやま』を年間12回折り込んだと仮定して試算してみよう。
誇張を避けるために偽装部数が存在しないという前提に立ち、ABC部数(新聞の発行部数)を基準にシュミレーションを試みる。
※岡山県における山陽新聞のABC部数 :450,693
※岡山県における山陽新聞の折込広告部数:495,250
折込チラシの部数は、折込センターが作成した定数表(「岡山県」をクリック)からピックアップした。念のために『晴れの国おかやま』を発行している岡山県庁に問い合わせてみたが、岡山県下の山陽新聞の販売店に卸している部数は、上記の数字で間違いないとのことだった。
これに対して岡山県下における山陽新聞のABC部数は、450,693部しかない。チラシ枚数の方が、チラシの運び屋である新聞よりも、約4万5000部も多いのだ。予備のチラシが若干必要としても、異常な実態だ。
実際にどの程度のいわくつきの収入が発生しているのだろうか?新聞の折り込み物はサイズによって手数料が異なる。『晴れの国おかやま』のサイズはB3である。手数料は1枚につき4円。チラシの水増し数は、約4万5000部であるから、これに4円を掛けると推定被害額を算出できる。具体的には次のような数式になる。
45,000×4円=18万円
ひと月に18万円である。これを1年に換算すると、216万円になる。この金が販売会社と折込センターに入っている可能性が高い。たった一種類のチラシから、これだけ大きな収入が上がっているわけだから、全体的に見れば、膨大な額の「黒い収益」を上げていることになりそうだ。
岡山県庁に事情を説明したところ、「もし、事実であれば広報紙だけの問題ではないので、警察に動いてもらう必要があるでしょう。情報を寄せてほしい」と、コメントした。
(黒薮哲哉)
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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090121-00000001-mnj-soci