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2009年01月21日(水) 11時13分

広がるワンクリック募金 手軽に社会貢献も…1社当たりは伸び悩み産経新聞

 インターネットのサイトをクリックするだけで、環境保全や途上国の教育支援などに募金ができる「ワンクリック募金」が広まっている。クリックした人に代わってスポンサー企業が寄付をする仕組みだ。一般の人が金銭的負担なく手軽に社会貢献ができ、企業は自社のサイトの閲覧件数が増えるほか、CSR(企業の社会的責任)を実践できるといった利点がある。ただ、最近は募金の種類が多岐にわたるようになり、1社当たりのクリック数が伸び悩むという課題もある。(平沢裕子)

・1球投げるごとにワクチン10本を贈る和田毅投手

 ◆1日1回

 医師や看護師ら医療従事者でつくる「周産期医療の崩壊をくい止める会」(東京)は、出産で亡くなった女性の遺族を支えるためのワンクリック募金を平成20年9月から始めた。

 医療情報誌やコンサルタント会社がスポンサーとなり、同会が運営するサイトの指定された部分をクリックすると、1日1回につき10円がスポンサーから寄付される。1カ月間で1社につき約1万円分のクリック数があるという。寄付金は振り込みによる募金などと合わせ、見舞金として、遺族に渡していく。

 事務局は「出産で妻や母を亡くし、つらい思いをしている家族に、何か手を差し伸べられないかという思いから始めた。振り込みによる募金は敷居が高いが、サイトをクリックするだけなら、より多くの人に協力してもらえ、世の中全体でこうした家族を支える仕組みになれば」という。

 ◆ポリオワクチンに

 宝酒造(京都)は20年3月から、1カ月間限定のクリック募金を約1カ月おきに開設。次回は2月3日から1カ月間を予定しており、クリック1回につき1円を自然保護活動をしているNPOなどに寄付する。広報課は「毎回20万〜30万回のクリックがある。CSRの一環として行っているが、開設中はサイトの閲覧が増えるのもメリット」と説明する。ただ、20年度の事業ということで、次回が最後の募集となる。

 クリック募金による寄付を企業から受けている「世界の子どもにワクチンを日本委員会」(東京)は、これまで約250万円の寄付を受けた。ポリオワクチンに換算すると約12万5000回分で、事業管理部の根本努さんは「寄付金はミャンマーなどアジアの子供たちにワクチンを届けるために使わせていただいている。企業数も増えており、寄付金が増えれば、より多くの子供たちが救える」と期待する。

 ◆推定300万人

 森林保全活動への寄付を目的に、17年6月からクリック募金を行ってきたキリンホールディングス(東京)は、20年11月28日からサーバーメンテナンスのため募金を停止している。21年以降も継続するかどうかは検討中だ。これまでの募金総額は1625万円(1625万クリック)。ただ、18年に550万あったクリック数が、19年は450万、20年は380万と減っている。

 広報部は「多くの人に参加してほしいとの思いから始めた。CSRの取り組みは続けるが、社会の状況をみてどういう取り組みがいいか見直している」という。

 「クリックで救える命がある」をモットーに、8年間で2億円(2億クリック)を超える募金を集めたクリック募金サイト「DFF(donate for free=無料で募金)」では、クリック募金参加人口を約300万人と推定する。キャンペーン期間などを利用して募金の参加企業は増えているというものの、「多くのサイトがある中で、1日当たり1人1回のクリックを毎日してもらえるかは課題」と悩ましい現状も訴えている。

 手軽にできるワンクリック募金だが、まずはサイトを見てもらわないことには始まらない。今後は、募金活動を行っているということをどのようにPRしていくかが、各企業、団体の腕の見せ所となりそうだ。

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