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2009年01月21日(水) 02時36分

<オバマ大統領就任演説>全文(3)毎日新聞

 我々はこの遺産を引き継ぐ。さらなる努力に加えて、これらの理念に再び導かれ、新しい脅威に対抗できる。国家間のさらなる協力と理解を得る努力だ。我々は責任を持ってイラクから撤退し、イラクの人々に国の将来を任せる。そしてアフガンでの平和を取り戻す。古くからの友人とかつての敵とともに、核の脅威を減らすために絶えず努力する。

 さらに地球の温暖化とも戦う。我々の生き方について謝罪はしないし、自己弁護もしない。無実な人々を殺したり、脅迫で自己の利益を図る者に対し、告げる。我々の意思の方が強く、我々の意思を曲げることはできない。我々はあなたたちより長く生き、そしてあなたたちを打ち負かす。

 我々の多様な出自は強みであり、弱みではない。キリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒、ヒンズー教徒、そして無宗教者の国だ。地球上の津々浦々を源泉とする、あらゆる言語と文化で形作られている。内戦(南北戦争)や人種差別という苦い経験もしたが、その暗い時代をへて、我々はより強くなり、きずなも深くなった。

 かつての憎しみはいずれ消え、我々を分け隔てた壁はいずれ消える。世界が小さくなるにつれ、我々が共通に持つ人類愛が出現する。そしてアメリカは平和の時代をもたらす役割を果たす。

 イスラム世界には、共に歩む方法を新たに探す。共通理解を進め、互いに敬意を持つ。対立をあおったり、国内の社会問題が生じた責任を西側世界に押しつける指導者たちは、あなたが何を壊すかでなく、何を築けるかで、国民が評価することを知るべきだ。

 腐敗、策略、口封じで権力にしがみつく指導者たちは、大きな過ちを犯していることを知るべきだ。しかし、こぶしを握っているその手を開くならば、我々も手を差し伸べる。

 貧しい国々の人々には我々が寄り添うことを約束する。農地が豊かになり、きれいな水が流れるようにし、空腹を満たすとともに、飢えた心も満たす。そして我々のように比較的豊かな国々は、国境の外での苦しみを無視したり、影響を気にとめず、地球資源を浪費できない。世界は既に変革し、我々はそれに合わせて変わらなければならない。

 我々の進む道を熟慮しながらも、今まさに、遠く離れた砂漠や山々で警戒に当たる勇敢なアメリカ人へ謙虚に、そして感謝の念を持ち、思いをはせる。彼らは今日、我々に教訓を与えてくれる。アーリントン国立墓地に眠る英雄たちのように。

 彼らが自由の守護者だからでなく、彼らには奉仕の精神があり、自分たち自身よりも偉大なものが存在し、それに意味を見いだすことができるからこそ、彼らに敬意を表す。そして、この歴史的な瞬間、こうした精神こそを我々がみな共有しなければいけない。

 政府に何ができ、何をしなければならないかは、究極的には米国民の信念と決意が決定する。それは、堤防が決壊した時に見知らぬ人をも招き入れる親切や、友人が仕事を失うことになるよりも、自分の労働時間を削ってでも仕事を分け合おうという労働者たちの無私無欲なのだ。

 こうして最も暗い時を切り抜けることができる。それは煙に満ちた階段を駆け上がる消防士の勇気や、子どもを育てる親たちの意志が、最終的に我々の運命を決定付ける。

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