2009年01月20日(火) 11時50分
膨らますと快適な仮設住宅に:高さ1mのキット『ライフキューブ』(WIRED VISION)
サンフランシスコ発——困難な状況においても、希望だけは失ってはならない場合もある。しかし、ベッドやソファ、フリーズドライ食品、約190リットルの水が入った袋、救急箱、ラジオ、調理用のこんろを装備した、膨らませて使うシェルターが必要な場合もある。
後者はまさに、カリフォルニア州サンタバーバラの新興企業Inflatable World社が売り出そうとしている『Life Cube』だ。1辺およそ1.2メートルの立方体に詰め込まれたLife Cubeは、展開して膨らませると高さ約3.6メートルの構造物になる。
材料は、厚いプラスチックだ。ちょうど、家の形をしていて、内部で飛び跳ねて遊べるトランポリンのような感じだ。
簡単に組み立てられるシェルターのほか、6人が、災害後の数日から数週間を快適に過ごせるという日用品がセットになっている。[内部の電灯やラジオなど電気製品は、ソーラーパネルで充電した12Vバッテリーを使う]
価格は3900ドルを予定しているため、災害後の生存に関心を持つ裕福な人たちがターゲットになるかもしれない。
「突然の状況を生き抜くために必要なすべてを完備した、万能なデザインでなければならない」と、創設から間もないInflatable World社で事業開発の責任者を務めるNick Pedersen氏は説明する。「少なくとも、重要な最初の72時間を切り抜けられるようにしたい」
被災地の仮設住宅に注目した企業はInflatable World社が初めてではない。『TED Prize』を受賞したCameron Sinclair氏や、『Architecture for Humanity』などさまざまな建築の専門家たちが、災害後に人々が生き抜くための建物を設計している。
ただし、Inflatable World社が狙っているのは、米連邦緊急事態管理庁(FEMA)が提供するような長期生活用のトレーラーと、災害の直後に使われるテントの中間にあたる市場だ。
FEMAが発表した『災害後の住居に関する計画2008年版』では、最初に災害が発生してから、壊れた住居が建て直されるまでの期間について、重要度が高いと位置づけている。
「この合間にあたる時期、家を失った被災者に建物を供給することが、すべてのレベルの行政で緊急事態管理の担当者が直面する最も明白な問題だ」と、FEMAは述べている(PDFファイル)。
発展途上国では、災害後に簡易シェルターを供給することがさらに難しい。2005年10月にパキスタンが大地震に見舞われたとき、多数の命が奪われた。ほとんどの人は、最初に地震が起きてからの数週間、屋外での生活を強いられたことが死因だった。2008年10月にも、パキスタンを地震が直撃した。赤十字は「シェルターと毛布の差し迫った必要性」を指摘している。
[2005年のパキスタン地震では、建物の倒壊による下敷き等で9万人以上の死者が出たほか、家を失った人は250万人にのぼると見られている。地震そのものによる被災に加えて、山間部では道路が寸断されて救援物資が満足に送る事ができず被災者に暖房器具が送れないため、冬の寒さによる犠牲者が増加した]
Pedersen氏によると、Inflatable World社はLife Cubeの生産を開始するため、100万ドルの資金を調達しようとしているところだという。緊急救援に従事する赤十字などの機関と、米国南東部の災害が多い地域の消費者に売り込む予定だ。
Life Cubeは、Inflatable World社のフラッグシップ製品であり、米エネルギー省の後援で2008年11月に開催された『California Clean Tech Open』でファイナリストになった製品でもあるが、同社はほかのタイプの「空気を膨らます建造物」も計画しており、そのなかには次世代の滑り台もある。大破局のあとでも楽しくあるべきだからだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090120-00000004-wvn-sci