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2009年01月20日(火) 18時35分

【神隠し公判4日目(19)】「お前の性奴隷なんてならない」「ケダモノ以下」…母の怒声響く産経新聞

 《「最も連れ去りが成功する可能性が高い」という考えだけで、星島貴徳被告から狙われた東城瑠理香さん。母親ら遺族は、犯人がどういう顔をしていたのかを瑠理香さんに見せるため、遺影を抱えて毎回裁判を傍聴し、瑠理香さんの当時の恐怖や理不尽な犯行への怒りを代弁するために証言に立ったという。検察官の質問は続く》

・「人間の顔をした悪魔」と指摘された星島被告

 検察官「瑠理香さんは怖がりでしたね」

 母「はい。とても怖がりでした」

 検察官「そんな瑠理香さんが、被告に襲われて殴られた際に1度しか悲鳴を上げず、あとはだまっていましたよね。どうしてだと思いますか」

 母「瑠理香は頭の良い子でした。『また悲鳴を上げれば、殴られたり、もしかしたら殺されたりするのではないか』と考えていたと思います」

 検察官「被告は公判で『瑠理香さんを性奴隷にしたかった』と言っていますよね。これを聞いて瑠理香さんはどう言うと思いますか」

 母「なるわけないじゃないですか。『お前なんかの性奴隷なんてならない』『何を考えているんだ』と罵倒(ばとう)していると思います」

 《検察官の質問にも、あまり感情的にならず冷静に答えていた母親だが、『性奴隷』の点には、声を荒らげて答え、法廷には遺族らのすすり泣く声も漏れた》

 《星島被告は、帰宅した東城さんを襲い、目隠しした上で包丁で脅し、2軒隣の自室に連れ込んだ。ベッドの上に寝かし、両手足を縛った。室内の電気を消したままだった。母親による瑠理香さんの心境の代弁が続く》

 検察官「連れ去られた瑠理香さんは、どんな気持ちだったと思いますか」

 母「恐怖の中、『早く帰してほしい』『とにかく助けて』。これだけを考えていたと思います」

 検察官「このとき(部屋に連れ去られた後)も、瑠理香さんは声を出しませんでしたね」

 母「本当は『ここから出して』と叫びたかったと思います」

 《母親の代弁を星島被告はじっと下を向いて聞き入る。当時の状況を思いだしてか、耳を赤らめて耐えているようだ》

 《瑠理香さんの行方不明を知った同居の姉からの通報で警察がマンション内の捜索を始めた直後の4月18日午後10時20分ごろ、捜査員が星島被告宅を訪問していた。この際には瑠理香さんは生存していた。検察官は核心の状況についても母親に代弁を求める》

 検察官「警察官が(星島被告宅の)ドアをノックした際には、瑠理香さんはどう思っていたでしょうね」

 母「『だれかが助けに来てくれた』と思ったはずです」

 検察官「その際にも、瑠理香さんは声をあげていませんね」

 母「『せっかくここまでがんばってきたのだから、声をあげたら努力が水の泡になる』。そう思って必死で耐えていたのだと思います。瑠理香は我慢強い子でしたから…」

 《しかし、その忍耐も星島被告には届かず、東城さんは包丁を首に突き刺される。それも何の前触れもなく、無言で刺された》

 検察官「刺された瞬間はどう思っていましたか」

 母「…。痛みと苦しみと…。それでも『絶対に生きよう』と考えていたと思います」

 検察官「瑠理香さんは生きて何をしたいと思っていましたか」

 母「やり残していることはいっぱいありました。仕事が楽しくなってきたころでしたし、瑠理香は結婚にもあこがれていました。『ウエディングドレスも着たい』と言っていましたし、結婚して子供も産んでいたでしょう」

 《いつしか母親は代弁に変わり、自らの感情を抑えられないように思い出を語り始める》

 母「(事件)直前に瑠理香と話していたことがありました。『もう少ししたら家族で旅行に行こう』と話していました。あと友だちとおいしいものも食べたかったでしょうし、いとこともカラオケにも行っていたでしょう。やり残したことは限りありません」

 《東城さんは首を刺されてから10分間は生存し、痛みに必死に耐えていた》

 検察官「星島被告は『なかなか死ななかった』と公判で話していましたが…」

 母「死ななかったんじゃない。死ねなかったんです! 絶対に生きようと死ねなかったんです!」

 《母親は感情を抑えられない様子で大声で答える。母親は、東城さんの同居の姉からの連絡で長野から現場に向かった。殺害された時刻は、向かっていた最中だったことになる。母親は当時を振り返る》

 母「何もしてあげられなかった。母親として、すごく情けないというか、そういう気持ちになりました」

 《星島被告は『性奴隷』にしたいと連れ去った瑠理香さんを殺害した理由について、公判で『瑠理香さんが犯行(連れ去り)の証拠になり、自分の生活を守るために殺害した』などと話していた》

 検察官「瑠理香さんが殺害される理由は何か思いあたりますか」

 母「何も思いあたりません」

 検察官「殺害の動機を星島被告が公判で話しているのを瑠理香さんが聞いたら、どうしていると思いますか」

 母「『何で、そんな理由で』と、たぶん発狂していると思います」

 《星島被告は、瑠理香さんを殺害したばかりか、遺体を原形をとどめないほどに切断して捨てていた。心配した母親がマンションに着いた際に、切断を始めていたという》

 母「もし、あのとき分かっていれば、(現場検証で規制する)警察官を振り切って乗り込み、瑠理香を連れて帰ってきたと思う」

 検察官「でも、被告はトイレに流しましたね」

 母「瑠理香はとてもきれい好きでした。とても、とても…。そんな子の腕を傷つけ、生ゴミや汚物と一緒に切り刻んで流すなんて…。絶対に許せません。人間じゃないと思います。ほんとにケダモノか、それ以下だと思います」

 検察官「『下水道から骨が見つかった』と警察から聞かされたときは、どう思いましたか」

 母「瑠理香だと確信しました。小さいときからがんばり屋で、そんなところに流されても、流れの中で必死に耐えて、『自分を見つけてほしい』と…。だから発見を聞いて、瑠理香だと確信しました」

 《法廷には、毎回、同居の姉とともに、仲の良かったいとこらも傍聴に来ているという。法廷までの長い廊下を歩く途中、いとこらは『瑠理香がいるんじゃないか』『どこかな』と死んだことを受け入れられずにいるとする。検察官は瑠理香さんが殺害されていることを知った後の遺族の心境などを尋ねていく》

    =(19)に続く

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