2009年01月20日(火) 17時56分
【神隠し公判4日目(17)】魂宿る首の骨「帰ってきてくれた」…死受け入れず、仏壇なし(産経新聞)
《星島貴徳被告に殺害、遺体をバラバラにされた被害者、東城瑠理香さんの母親に対する証人尋問が続いている。母親は愛娘を亡くした悲しみをこらえ、はっきりとした口調で、しっかりと検察官の質問に答えた。法廷は水を打ったように静まりかえった》
・幼少時代の東城さんの写真に嗚咽
《検察官は、東城さんが被害にあった自宅マンションの防犯設備について質問した》
検察官「多少お金がかかっても防犯設備の整ったところに住んでいれば、安心だと思っていたのですか」
母「はい」
検察官「危険と考えたことは」
母「一度もありません」
検察官「瑠理香さんが引っ越した後もメールや電話で連絡を取り合っていましたが、4月13日にあなたが瑠理香さんと電話で話している通話記録が残っています。何の話をしたのですか」
母「瑠理香の仕事のことです。瑠理香は平成20年1月に転職したのですが、『仕事のことが心配だ』と話していました、だから、『仕事はどうしたの』と聞きました。そうしたら、『お母さん、慣れてきたから大丈夫。5月に甲府でイベントがあるから、時間があったら長野に寄るね』と話していました」
検察官「瑠理香さんと最後に話したのはいつですか」
母「その時です」
検察官「最後になると思っていましたか」
母「いいえ」
検察官「どうしてですか」
母「普通に考えたら、瑠理香は健康で、若いし、そんな風になるなんて思ってなかったから…」
検察官「3人のお子さんがいますが。それぞれに思い入れがあると思いますが、瑠理香さんの存在は、どういう存在でしたか」
母「大きな存在です」
検察官「どうしてですか」
母「私は長野の田舎から出たことがないのに、瑠理香は東京にいって、いろんなことを吸収して、資格もたくさん取って、私がやったことないことをどんどん吸収していく。頼もしく思っていました」
検察官「これからもいろんなことを実現していくんだろうと」
母「もちろんです」
検察官「自慢の娘だったのですね」
母「みんなに言いふらしたいくらい自慢の娘です」
《母親は検察官の質問に答え、瑠理香さんの妹や幼なじみのいとこ2人がいかに、瑠理香さんのことを大切に思っているかを切々と訴えた。『あこがれの姉だった』『瑠理香さんが目標だった』。周囲はみんな思いやりのある瑠理香さんが大好きだった》
《突然、法廷の左右両壁に設置された大型モニターにゴミ捨て場の写真が映し出される》
検察官「被告人が瑠理香さんの遺体(の一部)を捨てたマンションのゴミ捨て場です。ここに捨てられたものがどうなるのか…」
《モニターの写真は、ゴミが処理施設に運ばれてクレーンで持ち上げられる様子、その後に圧縮され、最後は埋め立てられる様子へと変わっていく…。あまりに悲しい光景。傍聴席からは嗚咽が漏れる》
検察官「瑠理香さんの遺体が最終的に埋め立て地に捨てられたことについて、どう思いますか」
母「なんで瑠理香がこんなところに捨てられなきゃいけないのか…。激しい怒りを感じます」
検察官「切り刻んだ遺体を下水道に流した。下水道で見つけることができた骨の写真を(法廷で)見ましたね?」
《検察側はこれまでの公判で、下水道から発見された瑠理香さんの骨の写真などを証拠として大型モニターで示している》
母「瑠理香とは信じられない。信じなきゃいけないんですよね…。なんでこんなに切り刻まれなきゃいけないのか、瑠理香が何か悪いことをしたのか、悪いことなんかしてないはずです…」
《質問に答える母親の近くの被告人席に座る星島被告。上半身を前方に倒してまばたきもせず床を見つめていた。普段、青ざめている顔は真っ赤になっている》
検察官「警察から遺体を返されたとき、どんな気持ちでしたか」
母親「ほんとうにちっちゃな、ちっちゃな棺に収められて…。帰ってきました」
検察官「現実のことと受け止められましたか」
母親「瑠理香の顔も体も見ていない、触れてもいないんだから、理解できませんっ!」
検察官「警察と法医学教室の先生から、(見つかった骨の)DNA型が瑠理香さんと合致したと説明を受けましたね」
母親「それでも死を受け入れられませんでした。いくら科学に基づいて説明を受けても、私は瑠理香をみてません。だから、受け入れられません」
検察官「遺体を受け取るとき、一つだけ骨を見せてもらいましたね。どんな骨でしたか」
母親「第二頸骨という首の骨です」
《大型モニターにリングのような形をした骨の写真が映し出される。母親は骨についての説明を続けた》
母親「この骨の形は座禅をしているような姿。そこの中には魂が宿っていると、そういう話をして下さいました。きっと、瑠理香は魂だけでも帰ってきたかったんだろうと先生はおっしゃっていました」
検察官「発見された状態について、法医学教室の先生はなんと言っていましたか」
母親「『これほどバラバラにされて、これだけきれいなまま見つかるのは不思議なくらいだ』とおっしゃっていました…」
検察官「そのとき、どう思いましたか」
母親「瑠理香は体を切り刻まれて、見えなくなってしまった。『魂だけはみんなのもとに帰りたい』と、ここに魂を込めて帰ってきてくれたんだと思います」
《留学中の瑠理香さんの写真が大型モニターに浮かび上がった。やわらかな笑みをたたえている》
検察官「(事件後)瑠理香さんが留学にいっているだけだと考えることはありますか」
母親「毎日、思っています。留学から帰ってきた時のつばの大きな帽子が印象的だったので、ああいうきれいな格好をして、『ただいま、瑠理香だよ』って玄関を開けて帰ってきてくれそうな気がします」
検察官「瑠理香さんがそばにいると…」
母親「思ってます」
検察官「食事はどうしていますか」
母親「瑠理香の分のご飯も、おみそ汁も箸も用意して、『一緒に食べようね』って言っています」
検察官「お茶は」
母親「瑠理香がコーヒーが好きなので、コーヒーを飲むときは、瑠理香の分も入れて一緒に飲んでいます」
検察官「外食は」
母親「お水と飲み物、スプーン、お皿をもう1人分下さい、ってお願いします」
検察官「お店の人はどう対応しますか」
母親「ちょぴり変な顔をしますが、私たちは気にしません!」
検察官「仏壇は」
母親「ありません」
検察官「なぜ仏壇がないのですか」
母親「私たちは瑠理香の死を受け入れていません。一番は瑠理香が受け入れられていないと思う。だから、仏壇はつくりません」
検察官「どういう時に仏壇を整えるのですか」
母親「それは、悲惨な目にあった瑠理香自身が本当に死を受け入れ、私たちが瑠理香の死を受け入れられたそのときです」
=(18)に続く
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