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2009年01月20日(火) 16時58分

【神隠し公判4日目(13)】「何で瑠理香の名前と写真が…」 最悪の結末、テレビを見た母の混乱産経新聞

 《検察官は引き続き、東城瑠理香さんの母に対し、事件に進展がないため自宅のある長野に戻った後の行動や気持ちを一つ一つ質問する。やり取りが耳に入っているのかいないのか、星島貴徳被告は相変わらず下を向いたまま微動だにしない》

・被告は「あれは女の自作自演」と同僚に言っていた

 《事件発生当時の新聞記事が大型モニターに映し出された。見出しは「23歳女性失跡 家に血痕」と書かれている》

 検察官「長野に帰った後も事件のことは報道されましたね」

 母「はい」

 検察官「生きていると信じていましたか」

 母「はい、信じていました」

 検察官「母としてどのように心配していたのですか」

 母「(自宅の)壁に血が付いていたということなので、傷ついて痛みに耐えられるのか、ご飯は食べているのかということとかです」

 検察官「このときも瑠理香さんは帰ってくると思っていましたか」

 母「はい、思っていました」

 検察官「長野に帰ってきてからはどのように暮らしていましたか」

 母「生活のために仕事をしました。おなかが空けばご飯を食べましたし、眠たくなれば寝ていました。普通の生活をしていました」

 検察官「そうしなければならなかったのですか」

 母「やることがいっぱいあったのです」

 検察官「やることとはどういうことですか」

 母「ご飯をつくるとかです。普通の親だったら倒れたり、病院に運ばれたりするのが普通なのでしょうが、生活のため、家族のため、普通に暮らさなければならなかった。けれど普通だった自分が嫌でした」

 《午前中に証人として出廷した東城さんの元恋人と同じく、東城さんの母も事件を受けて自分を責めていた》

 検察官「本当はどうしたかったのですか」

 母「瑠理香のことだけを心配していたかったのです」

 検察官「(現場となった)マンションを解約しに行きましたね」

 母「はい」

 検察官「なぜですか」

 母「家賃を払うのが大変でしたし、瑠理香がこういうことになっていたので、『子供たちがまた同じ目にあうこともあるだろう』と考えたからです」

 検察官「瑠理香さんが助け出されても、もうマンションには住めないということですね」

 母「はい、心配だったのです」

 検察官「実際に(東城さんが住んでいた)916号室を引き払うことはできましたか」

 母「できませんでした」

 検察官「どうしてですか」

 母「警察に『事件が急展開するかもしれないので部屋で待っていてほしい』といわれたからです」

 検察官「『急展開』とはどういうことを予想していましたか」

 母「瑠理香が帰ってくるということです」

 《東城さんの母は気丈に大きな声で証言を続けている。東城さんの生存を信じているかどうかの質問に対しては、とりわけはっきりとした声で答えている。ここから検察官は東城さんの母が、犯人逮捕と東城さん殺害を知らされた経緯に関する質問を始めた》

 検察官「5月24日に警察が(星島貴徳被告の自宅である)918号室に捜索に入りましたね」

 母「はい」

 検察官「どういう気持ちでしたか」

 母「ただ、『瑠理香が生きて帰ってきてほしい』という気持ちでした」

 検察官「そのときは姉も一緒でしたね」

 母「はい」

 検察官「○○さん(東城さんの姉)はどういう様子でしたか」

 母「918号室が気になっている様子でした」

 検察官「○○さんは涙を流していましたか」

 母「いいえ」

 検察官「どういう様子でしたか」

 母「とにかく瑠理香のことが心配すぎて、(姉が)『何か心が冷たくなっているのではないか。どうしても泣くことができない』と言っていました」

 検察官「どんな言葉をかけたのですか」

 母「『あなたが毎日警察に話をしなければいけないのだから、あなたがおかしくなってしまったらいけない。気持ちを出しなさい』と言いました」

 《姉の憔悴(しょうすい)した様子をうかがい知ることができる》

 検察官「その後、犯人が逮捕されましたね」

 母「はい」

 検察官「どのように知りましたか」

 母「マンションに警察が来て、『犯人が逮捕され、供述を始めました』と伝えてきました」

 検察官「そのほかには何か言っていましたか」

 母「『もしかしたら最悪の結果になっているかもしれない。そのことを分かっていてほしい』と伝えてきました」

 検察官「『最悪の場合』とはどういうことですか」

 母「『犯人が殺したと自供している』と言っていました」

 検察官「そのとき警察に何かお願いはしましたか」

 《瑠理香さんの母は、「もし犯人の供述が何かの間違いで、別の真犯人のところで瑠理香さんが生きていた場合、身の危険が及ばないように瑠理香さんの写真と名前の扱いなどを慎重にしてほしい」ということを警察に依頼したという。最後まで瑠理香さんの無事を信じていたのだ》

 検察官「その後、どうなりましたか」

 母「妹から『瑠理香の名前と写真が出ている』と連絡がありました。テレビをつけたら、テレビにも瑠理香の写真と名前が映し出されていました」

 検察官「テレビを見たときどういう気持ちでしたか」

 母「何で瑠理香の名前と写真が写っているのか、何がなんだか分かりませんでした」

 《相当混乱していた様子がわかる》

 検察官「その後、犯人が『(東城さんを)殺害してバラバラにした』と供述しましたね」

 母「はい」

 《ここで検察官は「自室に連れ込み殺害」「切断遺体『一部ゴミに』」と見出しが取られた新聞記事を大型モニターに示した》

 検察官「『殺してバラバラにした』ということを信じることはできましたか」

 母「信じられませんでした。顔も何も見ていませんでしたから…」

 《今度は見出しが「遺骨が下水道で発見」と取られた新聞記事が映し出された》

 検察官「瑠理香さんが死んだということを理解できましたか」

 母「いいえ、理解できませんでした」

 《検察官は、繰り返し東城さんの生存を信じていたかどうか、死を受け入れられたかどうかを尋ねたが、東城さんの母はいずれの質問にもきっぱりとした口調で、「生きていると信じていた」とする言葉を返した》

    =(14)に続く

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