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2009年01月20日(火) 16時27分

【神隠し公判4日目(12)】手を合わせ、生存を信じて駆けつけた東城さんの母親 そのころ被告は…産経新聞

 《休憩を挟んで遺族が東城瑠理香さんの遺影を抱えて入廷した後、まっ白な顔で伏し目がちな星島貴徳被告がゆっくりと被告人席に着いた。裁判長が再開を告げ、東城さんの母親が証言に立った。星島被告は目を合わそうとはしない。検察官の母親への質問が始まる》

・元上司に目を合わせず、うつむいたままの被告

 《母親は長野市出身。昭和56年に結婚し、58年に東城さんの姉である長女を出産した。東城さんは59年9月に、妹の3女は63年2月に生まれたという。母親は事件が発生した昨年4月18日も長野に住んでおり、午後9時半ごろ、(同居の)姉からの『瑠理香が部屋からいなくなった。壁に血がついている』との電話を受けて事件を知ったという》

 検察官「そのとき、あなた(母親)は何をしていましたか?」

 母「確か、テレビを見ていたと思います」

 検察官「電話を受けた後は、どうしましたか」

 母「瑠理香のことが心配で、とにかく(現場マンションに)向かおうと思いました。それと、○○(長女の名前)のことも気になりましたし…」

 検察官「どうやって向かおうとしましたか」

 母「新幹線を使おうと思いました」

 《心配した母親は、すぐに荷物をまとめて新幹線の駅に向かったというが、終電が出た後だった。母親は近くに住んでいた自分の妹に連絡して、車で送ってもらうように頼んだ。そして母親は、瑠理香さんの叔父や叔母らと4人で車で東京に向かった。車中で母親は何を思っていたのか。検察官の質問は続く》

 検察官「車の中では、あなた(母親)は、瑠理香さんがどうしたのだと思っていましたか」

 母「『瑠理香はだれかに傷つけられた。連れて行かれた』と思っていました」

 検察官「殺害されているとは考えませんでしたか?」

 母「ありません」

 検察官「車の中で、あたながしていたことはありますか」

 母「手をあわせて、とにかく無事を祈っていました。『生きて帰って、見つかってくれ』と祈っていました」

 検察官「(一緒にマンションに車で向かった)他の人とは、何か話しましたか」

 母「『たぶん頭の良い子なので、どこかから逃げてくる』『すぐに見つかる』と、そういう話をしていました」

 《母親や親類らが無事を必死で祈る時間に、星島被告は瑠理香さんを躊躇(ちゅうちょ)なく殺害していたとみられる。母親らは高速道路を急いだが当日は雨で、なかなかスピードを出せなかったという。現場マンションについたのは日付をまたいだ19日午前2時だった》

 検察官「かなり時間がかかりましたね」

 母「とにかく、みんなが安全に着くことだけを考えていました。ただ、(道中は)とてももどかしく感じていました」

 《マンションに着いた母親らは現場検証のため、瑠理香さんの居室内に入ることを許されなかった。だが留め置かれたマンション9階のエレベーターホールには、もう1人東城さんを心配していた親族がいた。東城さんの姉だ》

 検察官「お姉さんは何をしていましたか」

 母「警察官に話を聴かれていました」

 検察官「あなた(母親)の顔をみて、お姉さんはどんな様子でしたか」

 母「ほっとしたような表情になりましたが、体がぶるぶると、震えていました。私は○○(姉の名前)を抱きしめて『戻ってくるから』と励ましました」

 《だが、励ましもつかの間で、姉は警察の事情聴取に戻った。聴取は夜明けまで続いた》

 検察官「長野から駆けつけて、あなたは何かできましたか」

 母「正直、何もできませんでした。すごくもどかしくて、いらだちだけが募りました」

 《それでも、母親は警察から、ひとつの情報を得たという。それは、マンション防犯カメラに瑠理香さんの帰宅する様子は映っていたが、連れ出される様子が映っていなかったことだった。母親はこの話を聞いて、同じく瑠理香さんを心配して駆けつけた元夫と励ましあったという》

 検察官「防犯カメラのことを聞いて、(元夫と)どういう話をしましたか?」

 母「『きっとマンションの中にいる』『もしそうでなくても近くにいる』と2人で励ましあいました」

 《しかし、瑠理香さんはなかなか見つからず、母親は瑠理香さんの姉とともに部屋で帰りを待つことにしたという。だが5月4日になっても瑠理香さんは帰ってこなかった。その間、警察からは室内のカーテンを閉めていることを要求された上、報道陣が大勢おり、外出はできなかったという》

 検察官「部屋から出ることはできましたか」

 母「できませんでした。ずっと身をひそめるようにしていました。『何でこんな狭い部屋で、カーテンもしめたまま2人で息をひそめていなければならないのか』と思っていました。とても不自由でした」

 検察官「それでも耐えたのですね」

 母「『瑠理香もがんばっている』と、2人で励ましあって耐えていました」

 《母親と姉が不自由な生活にも耐え、帰宅を信じていたすぐ近くで星島被告は、殺害した瑠理香さんの遺体を切断してトイレに流すなどしていた》

 《母親と姉の2人は5月4日に、『もしかして瑠理香がけがをして帰ってくるかもしれない』と考え、準備などのために、いったん長野に帰ることを決め、高速バスに乗ろうと池袋に行った。母親は久しぶりに人の群れをみたという》

 母「『この人込みの中に瑠理香がいるのではないか』と思いました。『会えるのではないか』と、ずっと探していました」

 《その願いは届かず、母親らは瑠理香さんが殺害さていることを後日知ることになる。検察官は、殺害を知ったときの心境を母親に尋ねていく》

    =(13)に続く

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