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2009年01月20日(火) 16時00分

【神隠し公判4日目(10)】唯一の弁護側証人は元上司…目を合わせず、うつむいたままの被告産経新聞

 《星島貴徳被告側の唯一の情状証人として、星島被告が請負契約を結んでいた会社の「上司」の男性が、スーツ姿で松葉づえをついて入廷。かつての職場の上司にもかかわらず、星島被告は顔をあげることもなく、うつむいたまま。この日は開廷直後から表情を変えることはまったくない。上司が宣誓書を読み上げると、弁護人による質問が始まった》

・背中を丸め顔を硬直させながら、両親の調書を聞く星島被告

 弁護人「まずは証人と被告の関係からお答えください。被告と証人が勤務している会社の関係は」

 上司「個人事業主と雇い側というか…」

 弁護人「被告と請負契約を結び、証人が請け負った仕事を、個人事業主である被告に下請けに出すということですね。支払われるのも給与ではなく、請負代金ですね。経費も認められるので受け取ったお金はすべて給与ということではないのですね」

 上司「はい」

 《前日の検察側による被告人質問で、星島被告はここ7、8年間、所得税などを支払っていなかったとされる。この弁護側の質問はそれに対する牽制(けんせい)なのだろうか》

 弁護人「具体的にはどんな仕事をしているのですか」

 上司「私どもの請け負った仕事を下請けして…」

 弁護人「具体的には」

 上司「ソフトウエア開発です」

 弁護人「請負先は」

 上司「お台場の方の会社です」

 弁護人「本件裁判は、2軒隣の女性を殺害、遺体を損壊した事件についてです。裁判の内容は昨日から裁判を傍聴していただいているので知っていますね。私とはどういういきさつで出会いましたか」

 上司「事件の後、本人(星島被告)の私物を回収して、先生に届けにあがったときに出会いました…」

 弁護人「証人も被告のことを気にかけていましたが、なぜ、情状証人として出廷していただけることになったのですか」

 《これまでの公判で目や耳を塞ぎたくなるような、殺害の過程や死体損壊の様子を星島被告自らが詳細に説明している。なぜ、情状証人として出廷しようと思ったのだろうか》

 上司「何度か会ううちに先生に頼まれて…」

 弁護人「他に証人がいないので、頼んで無理やり出てきてもらったと。そういうことでいいですね」

 上司「はい」

 弁護人「今、事件についてどんな気持ちですか」

 上司「とてもショックです。事件の内容は許されるものではありませんが…」

 弁護人「厳しい処罰を求めて出廷されたと」

 上司「いえ、そうではありません。事件は許されるものではありませんけれども…」

 《出廷の理由について言葉に詰まる証人。弁護人はここで星島被告の社内の評価などについて、質問を変える》

 弁護人「被告人の社内の評価はどうですか」

 上司「お客さまから何度かおほめの言葉をいただいたことがあります。仕事が速く進むと。社内では若手に技術的な指導をし、信頼も厚いです」

 弁護人「元請けからよい評価を得ており、新人教育指導もしていたと。新人社員は今、どんな気持ちでいるでしょうか」

 上司「とてもショックを受けていた。いまだに信じられない気持ちだと思います」

 弁護人「証人の会社の従業員の数は」

 上司「20人ぐらい」

 弁護人「請負契約を結んでいる個人事業主は」

 上司「10人ぐらいです」

 弁護人「そういう人たちとお酒を飲んだり、例えば、忘年会はするんですか」

 上司「忘年会はやります」

 弁護人「被告は参加しますか」

 上司「昨年は来ませんでしたが、2、3年前は来ていました」

 弁護人「どんな様子でしたか」

 上司「積極的にカラオケを歌い、みんなと同じように楽しく飲んでいました」

 弁護人「被告は仕事に誇りを持ち、満足していたようですが、当時、仕事についてどう思っていたか分かることはありますか」

 上司「以前、話を聞いたときに、『今の仕事を気に入り、お客さまを大切にしたい』と言っていました」

 弁護人「証人の会社に女性職員はいますか」

 上司「はい」

 弁護人「問題を起こすようなことはありましたか」

 上司「ありません」

 《星島被告について、特に女性に警戒心を持たれるようなタイプではなく、ごく普通のサラリーマンだったということを強調したいようだ。弁護人の質問は事件後の星島被告についてに移る》

 弁護人「事件を知ったきっかけは」

 上司「報道です」

 弁護人「被告から事件について聞いたことは?」

 上司「報道で聞いたあと、(星島被告から)『そういう事件あったの知ってますか、自分が住んでいるマンションだったんですよ』と言われました」

 弁護人「犯人と思ったことは」

 上司「ありません」

 弁護人「犯人と知ったきっかけは」

 上司「警察が職場にみえて…。警察から聞きました」

 弁護人「警察が職場に来て、捜索差し押さえしたか分かりませんが、証人はどう思いましたか」

 上司「何かの間違いかと思いました」

 弁護人「実際に犯人と分かったのは」

 上司「先生(弁護人)にお会いして、『本人が認めている』と聞いたときです」

 弁護人「他の社員は?」

 上司「みんなそう思っていました。信じられないと…」

 《星島被告の職場の様子からは犯行への動機は見あたらなかったようだ》

 弁護人「職場のストレスも本件犯行のきっかけになったと本人が言っているのですが」

 上司「すみません。私の方で気付けることはありませんでした」

 《星島被告が会社の関係者とケンカしたり、暴力的になったり、キレたりしたことはなかった−。弁護側はこうした平常時の星島被告の性格を強調したかったようだ》

     =(11)に続く

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