2009年01月20日(火) 15時34分
【神隠し公判4日目(8)】足の火傷は「ネコを追いかけて風呂に落ちた」…不注意悔やむ父親(産経新聞)
《昼の休廷をはさみ、午後1時半から公判が再開された。黒のトレーナーに黒いズボン姿の星島貴徳被告は、これまでに増して重い足取り。刑務官の声にも無反応で入廷し、目線を下に向けたまま、弁護人席前の長いすに座った》
・「瑠理香を返して!」友人…涙声で絶叫
《午前中は、殺害された東城瑠理香さんの友人や元恋人が出廷し、検察側が請求した証人として東城さんの人柄や星島被告に対する心情などを述べた。午後は、星島被告の両親が弁護人に対して語った内容を記した調書の朗読から始まった。まずは事件から約3カ月後の平成20年7月7日付の父親の調書からだ》
弁護人「貴徳は4月18日に女性を殺した事件を起こし、本人から手紙も来たので今では私も間違いないと思っています。私の知る限り、貴徳は普通の子で、こんな事件を起こす子ではなかった」
《星島被告は、幼少期に足にやけどを負ったことで両親を恨み、前日の公判でも語気を強めて「殺す」とまで言い切った。父親は、やけどを負った経緯についても述べている》
弁護人「貴徳はネコを追いかけて遊んでいるうちに風呂に落ちてしまい、やけどをしました。『ギャー』という声を聞いて駆けつけ、助け上げましたがひどいやけどを負っていました。近くの病院ですぐに治療を受けましたが、『助かるか分からない』と言われました。自分たちの不注意で一生残る傷跡を残し、大変申し訳ない気持ちです」
《父親からの謝罪の言葉は、果たして星島被告の心に届いたのだろうか。星島被告は下をむいたまま、身動きひとつしない》
弁護人「私は貴徳に、やけどを背負っても乗り越えて生きてほしいと思い、『やけどの跡を隠すな』と言ってきました。油断が取り返しのつかないことになると身にしみて分かったので、子供には厳しくしつけをしてきました」
「平日は私が仕事から帰ると子供は寝ていました。貴徳と遊ぶことはそれほど多くありませんでした。授業参観にも私が行くことはなかったですが、運動会でビデオ撮影したことがあり、貴徳は楽しそうに運動会に参加していました。兄弟の仲も悪くなく、大げんかや、口を利かないこともなかったです」
《星島被告と父親は、少年期から接点があまり多い方ではなかったようだ。それが、事件に至る星島被告の人格形成に影響を与えたのだろうか。星島被告は小中学校時代に転校を繰り返し、いじめのような扱いも受けたという。それを知った父親の心情も語られている》
弁護人「小学生で2回、中学生で1回転校し、『火だるま』といわれたことがあると聞きました。友達からからかわれても、それを乗り越えることが大切だと思っていました」
《父親が子供の将来に唯一望んだことは「人に迷惑をかけないで生きてほしい」ということだった。しかし、星島被告は最悪な形でその願いを打ち砕いてしまった。弁護人は中学、高校時代の交友関係に迫る》
弁護人「貴徳は非行に走って警察の世話になることもなく、学校から性格が変だなどと指摘されたこともなかったです。ただ中学、高校時代は貴徳は友達のことを話すことはなかった。親友がいたのかガールフレンドがいたのかも分かりません」
《公判の中でキーワードのように何度も取り上げられる「性奴隷」という言葉。星島被告の異常さを浮かび上がらせているが、子供のころは残虐性や身勝手な性格を感じさせることはなく、性的に異常な趣味も見受けられなかったという。どこにでもいるような少年期を送ってきた星島被告。普通の家庭で育ってきたはずの星島被告は、どこで道を踏み外してしまったのか》
弁護人「就職してからは貴徳と2度会いました。平成5年の夏か秋ころ、岡山駅で偶然会いました。貴徳に『(実家の)鍵のある場所は分かるな』とたずねると、『友達のところに行くからいい』と言いました。10年以上前に会ったときには、家族でレンタカーを借りて鳥取まで行きました。貴徳はみんなと騒いでいて普通でした」
《ただ、鳥取に家族で行って以降、次第に連絡がなくなってきたという。心配した父親は、平成9年か10年ごろに、星島被告が務めていた大手ゲーム会社に電話したことがあったというが、『退職している』といわれ、驚いたという》
弁護人「貴徳は会社に不満を言っていたこともあり、自分のやりたい仕事を探して転職したと思いました」
《11年7月には、星島被告がゲーム会社に勤めていた際に聞いた住所を頼りに、最寄りの警察に相談した。子を思う父親の思いが語られるが、星島被告の耳に届いているようには思えない》
弁護人「私も『人生最大の敵は自分の親』と思っていましたので、独り立ちして親離れしたのだと思いました。いつごろか、母が『捜さないでくれ』といわれたとも聞きました」
《就職後、家族とだんだん疎遠になっていく星島被告。ただ、妹とは連絡を取っていた》
弁護人「ここ数年のうちにも、妹が貴徳に会ってきたと言っていました。『結構給料もらえているみたいだから心配ないよ』といわれ、心配ないなと思いました」
《星島被告は5月25日に逮捕された。父親は、インターネットのニュースで事実を知ったという》
弁護人「翌日の朝まで呆然(ぼうぜん)としていました。貴徳には本当のことをしゃべって事件が解決してほしいし、被害者の冥福(めいふく)を祈ってほしい。被害者には申し訳ないということだけです」
《父親は、事件を起こしてしまった息子と、被害者となった東城さんへの苦しい胸の内で独白を締めくくっている》
=(9)に続く
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