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2009年01月20日(火) 13時15分

【神隠し公判4日目(6)】再会の約束の地は「川中島」産経新聞

 《法廷で検察官は東城瑠理香さんの元恋人に、交際当時の東城さんの様子を聞き続ける》

 検察官「あなたも東京の大学に入り、上京していますね」

 元恋人「はい」

 検察官「大学に進学してから2人の関係はどうなりましたか」

 《2人は一度は別れたが、大学に入って再び交際を始めたという》

 元恋人「上京して瑠理香とはもう会えないと思っていましたが、瑠理香の方から歩み寄ってきたので、『まさか』と思ってうれしかったです」

 検察官「その後はどのように過ごしましたか」

 元恋人「家族と離れ、信頼できる友人もいなくて、2人で遊んでいる中で『(瑠理香さんが)うちら依存症だね』と話していたのを覚えています」

 《元恋人が瑠理香さんと、瑠理香さんの妹と写った写真が大型モニターに示された。瑠理香さんが当時住んでいた錦糸町で撮影した写真で、3人とも楽しそうに笑っている。撮影したのは瑠理香さんの姉という》

 検察官「いつ撮影したものですか」

 元恋人「大学1年のときです」

 検察官「どんなときに撮ったものですか」

 元恋人「新宿に4人で遊びに行って帰る途中です」

 検察官「高校時代と瑠理香さんが変わった点はありますか」

 元恋人「色々なことを話してくれたり、心を開いてくれたり、優しくなりました」

 検察官「瑠理香さんは志望大学に入れなかったことで、留学や英語に対する熱意がさめている様子はありましたか」

 元恋人「ありません」

 検察官「大学に落ちたことで『がんばらなくてはいけない』と、一緒にいても1人で勉強していました」

 《東城さんが目標のために絶えず努力していた様子がうかがえる》

 検察官「瑠理香さんは平成16年3月カナダに留学しましたね」

 元恋人「はい」

 検察官「留学が決まったときの瑠理香さんの様子はどうでしたか」

 元恋人「夢がかなってとても喜んでいました」

 検察官「いつまで交際は続いていましたか」

 元恋人「大学1年のあたりです」

 検察官「平成16年1月ですね。なぜ別れたのですか」

 元恋人「瑠理香はもういないので(詳しい理由を)聞くことはできませんか、瑠理香が『カナダに行くから、錦糸町のマンションが空くのでそこに住みなよ』と言われ、『瑠理香たちがいないのに1人で住むのもおかしい』と思って断ったら、その後に(交際関係が)自然消滅してしまいました」

 《自分でも別れた理由がよく飲み込めていない様子だが、また交際が再開されると信じていたようだ。だが、それはもうかなわなかった》

 検察官「瑠理香さんのことが嫌いになりましたか」

 元恋人「いえ、好きでした」

 検察官「その後、連絡は取りましたか」

 元恋人「『嫌われた』と思っていたので、瑠理香から連絡がくるのを待っていました」

 検察官「瑠理香さんが行方不明になったのはどうやって知りましたか」

 元恋人「共通の友人から電話があって『心配しないで』ということを言われたのですが、何のことか分からず、聞いても教えてくれませんでした。なのでその後、すぐに別の友人に連絡を取って(事件を)知りました」

 検察官「事件を知ってどう思いましたか」

 元恋人「実際に4年近く会っておらず、いなくなったことが信じられないけど心配であせっていました」

 検察官「ニュースは見ましたか」

 元恋人「いいえ、もしかして『殺された』というニュースが流れるかもしれず、見ることができませんでした。瑠理香に電話をかけましたが、昔の電話番号なのでつながらず、何もできなかったです」

 検察官「(瑠理香さんが殺されたことは)どうやって知ったのですか」

 元恋人「犯人が分かった日に、瑠理香のお姉さんから電話をもらって教えてもらいました。『瑠理香はやっぱりダメだった』と言っていました」

 検察官「どういう様子でしたか」

 元恋人「自分の知っている姉は空回りするくらい元気でしたが、暗く沈んでいました」

 検察官「それを聞いてどう思いましたか」

 元恋人「やはり信じられなくて受け入れられなかったです」

 検察官「その後、どう過ごしましたか」

 元恋人「今まで通り過ごそうと会社に行きましたが、同僚とか話している中で自分が笑ったりすると、『こんなときに何で笑っているんだろう』とか、普通に生きていておなかが空いても『何で空くんだろう』と腹立たしく思っていました」

 《亡くなった瑠理香さんのことを思う余り、自分のことを責めたという悲しみが伝わってくる》

 検察官「仕事は手につきましたか」

 元恋人「仕事をしている方が気が紛れました」

 検察官「仕事から離れたときはどうでしたか」

 元恋人「泣いていました」

 《事件後、瑠理香さんのお別れの会が開かれたときの写真が示された。色とりどりの花で埋め尽くされた祭壇の真ん中に、笑顔の瑠理香さんの写真が飾られている》

 検察官「あなたは弔辞を読みましたね。家族から頼まれたのですか」

 元恋人「『自分から読ませてほしい』と申し出ました」

 検察官「どうしてですか」

 元恋人「瑠理香は強い人だったけど寂しがり屋でもあったので、『天国に行ってもこっちでは瑠理香のことを覚えている人がこんなにもいるから、寂しがらなくてもいいよ』と伝えたかったのです」

 《涙と鼻をぬぐった》

 元恋人「全部の思い出を語りたかったけど、忘れている部分もあって、できるだけ思い出をたくさん話しました」

 検察官「あなたは瑠理香さんの遺体と一度も対面していないけど、そのことについてはどう思いますか」

 元恋人「死んだと信じられません」

 検察官「(お別れ会が開かれて)心境はどうでしたか」

 元恋人「遺影や祭壇を見て、少しは瑠理香が死んだことが実感としてわきました」

 検察官「今でも瑠理香さんのことは思いだしますか。どういうときに思いだしますか」

 元恋人「思い出の品とかが結構残っていて、2人で使った食器や瑠理香のバスタオルとか見ると思いだします」

 検察官「手紙もありますか」

 元恋人「はい」

 検察官「どういう内容ですか」

 元恋人「瑠理香は普段は将来について語ろうとしませんでしたが、手紙では『おばあちゃん、おじいちゃんになっても2人で手をつないで歩いていこうね』と書いてある手紙を覚えています」

 検察官「(2人で見た映画のように)5年後に再会しようということでしたが、それはいつだったのですか」

 元恋人「平成20年9月27日です」

 検察官「瑠理香さんの誕生日ですね」

 元恋人「はい」

 検察官「約束の場所には行きましたか」

 元恋人「(地元長野市にある)川中島の八幡原です」

 検察官「何を思いましたか」

 元恋人「瑠理香が死んだことを信じ切れなくて、『もしかしたらいるんじゃないか』と思いました」

 検察官「(瑠理香さんは)いなかったですね」

 元恋人「はい」

 検察官「現実を知ってどう思いましたか」

 元恋人「現実を知りたくなかったです」

 《嗚咽を漏らしながら検察官の質問に答えている元恋人。さらに質問は続く》

    =(7)に続く

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