2009年01月19日(月) 19時00分
【テレビ評】「天地人」第3回、ラブコメと戦国ドラマ(ツカサネット新聞)
NHK大河ドラマ「天地人」第3回「殿の初恋」が2009年1月18日に放送された。「天地人」は戦国武将・直江兼続を描くドラマである。第2回までは子役(加藤清史郎)が中心であったが、この回からは妻夫木聡がメインとなる。
この回はサブタイトル「殿の初恋」が示すとおり、伝統的な大河ドラマには似つかわしくないラブコメ調である。民放の恋愛ドラマで活躍するキャストを揃えただけのことはある。
直江兼続と言えば切れ者というイメージがある。また、その主君である上杉景勝も無口ながら謹厳実直で威厳があるという印象である。両者共に老成した重々しいイメージである。ところが、この回の主従はコミカルで軽い。兼続(与六)は景勝(北村一輝)のためを思って色々と画策するが、全て空回りしてしまう。活躍は場を白けさせた景勝のために田舎踊りを陽気に踊って雰囲気を和ませたことくらいだが、これも智将のイメージとは異なる。
景勝も上杉謙信の別の養子・景虎(玉山鉄二)と比較される冴えない男という設定であった。また、兼続の尻を叩こうとするようなどお茶目な一面も見せている。主従に対する印象が大きく変わる回であった。大人物に成長していく主従を観ていくのが楽しみである。
前2回が泣ける話として感動的にまとめられたのに対し、今回はて笑えるシーンが多かった。また、景勝のシャイぶりに観ていて恥ずかしくなるほどであった。今回登場したヒロイン・お船(常盤貴子)と兼続が結婚するのは御館の乱後で、まだ先である。しばらくはラブコメ調が楽しめそうである。
今回は恋愛要素が強い一方で、戦国大河ドラマとしての要素も健在である。戦国武将を演じる俳優の雰囲気が歴史の教科書に登場する戦国武将の絵と非常に合っている。吉川晃司演じる織田信長は長興寺(豊田市)所蔵の紙本著色織田信長像(狩野元秀作)にそっくりである。
また、阿部寛演じる上杉謙信も熱演している。初回で登場した景虎時代の謙信は目が凛々と輝く豪傑風であった。史実の謙信は家臣同士の争いに嫌気をさして高野山に入ってしまうような繊細なところもあった。阿部謙信からは、そのような弱さは感じられない。一方で今回は法体姿で登場した。この姿は上杉神社(米沢市)所蔵の上杉謙信公像に似ている。阿部謙信は他者から観た謙信の再現と言える。
視聴率が好調と報道されている「天地人」はラブコメとシリアスな時代劇が同居する大河ドラマとして幅広い層に支持されそうである。
(記者:林田 力)
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