2009年01月19日(月) 19時40分
オバマ就任演説、「名言」誕生なるか?!(産経新聞)
バラク・オバマ次期米大統領が、20日の就任宣誓に続いて行う演説が関心を集めている。歴史的な景気後退など米国の苦境を踏まえ、政権の理念を示す就任演説では、南北戦争を経て国民の結束を訴えたエーブラハム・リンカーンや世界恐慌の中で米国経済の再建を担ったフランクリン・ルーズベルトをどこまで意識するのかが焦点の一つだ。これに対し、歴代の大統領演説を執筆してきた専門家は、歴史にとらわれない「オバマ色」をいかに出せるかがカギだとみている。(ワシントン 山本秀也、有元隆志)
【写真】特別列車でワシントン入り
■歴代大統領と比肩?
上院議員1期目途中で大統領当選を果たしたオバマ氏は、「変革」を訴えて聴衆に高揚感を与えるなど、巧みな演説を武器としてきた。米国がテロ対策や景気後退の打開策に悩む中、オバマ氏の就任演説が数々の名言を生んだ歴代大統領と肩を並べるのではないか、との関心が高まっている。
オバマ氏の広報担当は就任演説の骨格を、「米国の現状認識をきちんと示した上で、危機を克服するため、従来以上の強さと結束を呼びかける内容だ」と指摘。次期首席補佐官を務めるエマニュエル氏も「責任と透明性」が演説の柱だと述べるなど、オバマ氏の周辺は、ことさらに歴代大統領を意識した演説ではない、との説明に追われる。
とはいえ、「奴隷解放の父」であるリンカーンを敬愛し、その政治スタイルを徹底して取り込んできたのはオバマ氏自身だ。「自由の新たな誕生」という就任式典の公式テーマはリンカーンの演説の一節だ。
リンカーンは、1期目の就任演説(1861年)で奴隷制の維持を求め、連邦離脱に動いていた南部諸州に対して、「われわれは敵ではなく、友人同士だ」と呼びかけ、「知性と愛国心」による問題解決を訴えた。まさに人種や党派を超えた結束を求めるオバマ氏の政治理念と符合する。
「世界恐慌」まっただ中の1933年に就任したルーズベルトは、「われわれが唯一恐れるべきは、恐れそれ自体だ。不合理で明確な理由を欠く恐れこそは、後退から前進へ移るための努力をまひさせる」と指摘。「変革」を国民に呼びかけるオバマ氏が同じ言葉を演説で取り込んでも違和感はなさそうだ。
■演説専門家の声
演説上手といわれた大統領には、演説草稿の作成を専門とするスピーチライターが大きく貢献している。オバマ氏の場合も、多忙をきわめた選挙戦では27歳の若手ジョン・ファブロ氏らが演説文を手がけてきた。
6月の民主党予備選の勝利演説の場合、演説文作りはオバマ氏とファブロ氏がじっくり話し合うことから始まった。オバマ氏が語るた内容をファブロ氏がタイプし構成し直し、草稿を仕上げた。その上にオバマ氏が修正を加え完成させた。
米紙ワシントン・ポストによると、就任演説文づくりも同様で、11月にオバマ氏はデービッド・アクセルロッド次期大統領上級顧問とファブロ氏と約1時間、演説内容について話し合った。ファブロ氏は過去の大統領就任演説の録音を聴いたほか、レーガン元大統領の名スピーチライターだった保守派のペギー・ヌーナン氏にも助言を求めた。
ファブロ氏はオバマ氏の自伝「マイ・ドリーム」(邦題)を持ち歩き、2004年の全国大会での演説内容をほぼ記憶するなど、「簡潔で格調が高い」といわれるオバマ氏の文体、演説のスタイルを体得したという。
歴代大統領も就任演説はスピーチライターとの合作で仕上げてきた。就任式を間近に開かれたシンポジウムで、アイゼンハワー元大統領のスピーチライターだったスティーブン・ヘス氏は、オバマ氏を「リンカーン以来歴代大統領で最も素晴らしい筆力の持ち主」と評価し、演説ではリンカーンとは離れ「オバマ色」を前面に出すことを勧めた。
クリントン前大統領のスピーチライターだったマイケル・ウォルドマン氏は、オバマ氏が選挙戦で黒人である点を「軽く触れるだけだったことが効果的だった」とし、就任演説でも同様にするよう助言した。
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