2009年01月18日(日) 13時13分
新書「戦国時代」に 生き残りかけ、各社陣取り合戦(産経新聞)
新書をめぐる競争が激化している。「バカの壁」「女性の品格」などメガヒットが続出して市場参入が増える一方でブームはひとまず落ち着いた感も。限られた書棚のスペースをめぐり、各社のせめぎ合いが激しさを増している。
【写真】出版界に皮肉な救世主!? 売れる“不況本”
新書の歴史は、昭和13(1938)年の岩波新書創刊に始まる。“難解”なイメージがあったが、70年を経て著者や内容もバラエティー豊かに。現在は、平成15年の『バカの壁』(養老孟司著、新潮新書)の大ヒットに象徴される「第3次ブーム」とされている。
昨年10月、大手では唯一新書を出していなかった小学館が「小学館101(イチマルイチ)新書」で参入した。レーベル名は「百の上を目指す」という意味。マーケティング局の原本茂さんは参入の理由を「カジュアルな商品も増え、手軽に読みやすくなった。書店に専門コーナーがあるため単行本より目につきやすく、売り上げにつながると判断した」と話す。
創刊ラインアップは半数以上がすでに重版。経済評論家・勝間和代さんの「読書進化論」は初版5万部を早々と突破してベストセラー入りするなど好調だ。
「まずまずのスタートを切ることができたが、業界の争いは熾烈(しれつ)。ビジュアルを生かしたアート系など、小さくて持ち運びが便利という新書の利点を打ち出していきたい」(原本さん)と策を練っている。
いま、主なレーベルだけでも60以上と、新書市場は「狭き門」となっている。多くの書店で新書コーナーは満杯で、「売れない商品は新刊と入れ替えに、1カ月で返品する状態」(都内の書店)という。大手出版社の営業担当者は「定規を片手に数センチ単位で自社の棚を死守している」と明かす。新規参入組には、より状況は厳しく、18年創刊のソフトバンク新書の吉尾太一編集長は、「一目見ただけで買いたいと思わせる瞬発力が勝負」という。
ジャンル全体の売れ行きに陰りも。昨年刊行分では『悩む力』(姜尚中著、集英社新書)などが目立つものの、一時の勢いは去りつつある。そんな中、「何に基盤を置いてよいか分からない時代だからこそ、粘り強く考えていくための知を提供したい」(岩波新書の小田野耕明編集長)、「養老さんが10時間話した内容を凝縮し、700円余で提供できるのは新書だけ。編集部員が読みたいものを作る」(新潮新書の後藤裕二編集長)と各社は知恵を絞る。
永江朗・早稲田大客員教授(出版文化論)は「出版社は出版点数や発売日に縛られ、自転車操業になりがち。大衆に専門的知識を分かりやすく提供するという、新書の原点を踏まえたレーベルが生き残るのではないか」と話している。
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