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2009年01月18日(日) 22時22分

タツノコプロ、世界中どこでも分かる作品に産経新聞

 「ヤッターマン」や「キャシャーン」。働き盛りの30〜40代が子供のころに親しんだ名作アニメのリメーク作品が昨年からテレビで放映されている。春には劇場用実写版「ヤッターマン」(三池崇史監督)も公開される。竜の子プロダクション(タツノコプロ)の強みは第三者の権利に縛られないオリジナル作品を持っていることだ。魅力の秘密を探っていくと、独自色の強い制作システムと個性豊かな人材にいきあたる。

  【写真】これが深キョンドロンジョ様だ!

 タツノコプロは1962(昭和37)年、人気漫画家の吉田竜夫、吉田健二、九里一平(吉田豊治)の3兄弟が設立した。「タツノコプロの世界展」を開催した八王子市夢美術館の学芸員、浅沼塁さんは「漫画を原作にするのが通常のアニメのスタイルですが、タツノコはオリジナルが基本。竜夫さんが漫画制作集団として旗揚げしたので自分たちで作ることが自然だったのです」と解説する。

 ◆オリジナルで無国籍

 設立後、九里さんの漫画を見たプロデューサーからテレビの企画が持ち込まれ、64年からアニメ制作に乗り出した。脚本をつくる企画文芸部や作画などを行う演出部が設けられ、体制が整えられていく。

 演出部長だった笹川ひろしさん(72)は「ぼくも漫画作家だったし、オリジナルでという気持ちは強かった」と振り返る。以前は手塚治虫の専属アシスタント。タツノコでは「マッハGoGoGo」や「ヤッターマン」など数多くの作品で総監督を務める。昭和40、50年代には「昆虫物語みなしごハッチ」「科学忍者隊ガッチャマン」「タイムボカン」シリーズなどヒット作が相次いだ。

 「世界のどこで見ても分かるアニメをつくろうというのがうちのポリシー。学生服を着たような日本だけのものはやらない。キャラクターの衣装はハリウッド的だったし、ヤッターマンやガッチャマンでは街の風景なども無国籍な感じにした」と笹川さんはいう。

 人材も輩出した。のちに「機動戦士ガンダム」のメカデザインを担当する大河原邦男さん、世界的イラストレーターとなる天野喜孝さん、「GHOST IN THE SHELL攻殻機動隊」「うる星やつら」シリーズなどで海外にも多くのファンを持つ押井守さんら、アニメ界の巨星たちもタツノコから育った。

 ◆もっと自由に

 浅沼さんは「現場には才能豊かなクリエーターが集まってきたが、アニメは文化的に低く見られがち。メーンのカルチャーに対するアンチテーゼがパワーの源になったのではないか」と分析する。

 タツノコプロにはリメークの話だけで年に2、3件は舞い込む。ハリウッドでは「ガッチャマン」の3Dアニメの企画も進行中だ。成嶋弘毅社長は「われわれもアニメでリメークし、アメリカ版と同じマーケットに出してみたい」と語る。

 「アメリカの制作会社をM&A(合併・買収)して作品をやらせてみたい。あくまでも夢ですけどね」

 そんな希望もある。映画「スピード・レーサー」にはアニメ版のテーマソングのメロディーが使われ、メカデザインもほぼ同じだった。そこには、原作への敬意がにじみ出ている。だが、タツノコプロには逆に、原作にとらわれず、もっと自由な感覚でやってほしいという思いもあるからだ。(堀晃和)

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