2009年01月18日(日) 20時50分
ガザ停戦? イスラエルの狙いは何だったのか(産経新聞)
【カイロ=村上大介】パレスチナ自治区ガザ地区攻撃を続けてきたイスラエルは17日夜、「一方的停戦」を宣言し、1200人を超える死者を出した戦闘は小康状態に戻った。イスラエルのオルメルト首相は軍事作戦が当初の目標以上の成果を上げたと強調したものの、イスラム原理主義組織ハマスがいずれ、戦闘員補充などで戦力を回復するのは確実とみられ、ハマスのガザ支配を崩そうというイスラエルの狙いは今回も空振りに終わったといえるだろう。
イスラエル側は今回の「一方的停戦」発表にあたり、(1)ガザ地区への武器輸出阻止をめぐる協力で米政府と合意し、初めて具体的に「了解覚書」を取り交わした(2)イスラエル領に向けてロケット弾を発射するハマスの軍事力に深刻な打撃を与えた−などの成果を強調する。
エジプト政府は停戦に向けて両者の仲介に当たっていたが、イスラエルにすれば、これだけの猛攻撃の後で、間接的にせよハマスを相手方とする停戦合意に応じれば、ハマスがイスラエルの攻撃を生き延びたと宣言するに等しく、政治的にはむしろ「イスラエルの敗北」とみられかねない。エジプトの仲介には、そもそも乗るつもりはなかったに違いない。
イスラエル軍の攻撃の契機は、エジプトの仲介で成立した昨年6月の停戦合意の延長にハマスが応じず、ロケット弾攻撃を再開したことにあるとされている。しかし、前回の停戦後の動きを少し詳しくみれば、ハマスにとって最大の狙いだった「封鎖緩和」をイスラエル側が渋ったり、12月に入って挑発するかのようにハマス関係者を殺害するなど、ハマスが停戦延長を拒否するように追いつめていった面も否定はできまい。
ハマスは、イスラエルに対して実質的にはそれほどの軍事的脅威とはならないロケット弾を発射することで、ガザ住民を巻き込んでもイスラエル軍の攻撃を呼び込み、2006年のレバノン戦争でイスラム教シーア派組織ヒズボラが手にしたような「政治的勝利」を手にする狙いだったのだろう。
しかし、その後のイスラエル軍の攻撃が、子供の犠牲者だけで400人を超える(フランス通信)という事実上の無差別攻撃となり、国際世論からは「戦争犯罪ではないか」(国連機関や国際赤十字)という厳しい声も出始め、イスラエルとしても戦闘を停止するタイミングを模索せざるを得なくなった面もある。
イスラエル軍は依然、ガザ地区内に侵攻したままであり、ハマスは「イスラエル軍の撤退と封鎖解除まで戦う」として停戦を拒否する構えだ。国際社会は早くも、ガザ地区の復興支援に向けた協議を始めているが、そもそもガザ地区を実効支配するハマスを抜きにしたガザ復興をどう現実化するのかという道筋がみえない以上、支援は絵に描いたモチに終わりかねない。
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