兵庫県災害医療センター(神戸市)に頭部外傷で入院した30代男性が、臓器移植法に基づく脳死と判定され、心臓と肺が摘出されて17日、大阪大病院(大阪府吹田市)で国内初となる心肺同時移植が実施された。
阪大によると、手術は午後11時50分に終了。記者会見した移植チームの沢芳樹教授(心臓血管外科)は、患者の容体について「心臓も呼吸器も安定した状態。手術は成功だ」と話した。
移植を受けたのは、心臓と肺の重い疾患が重なるアイゼンメンジャー症候群の30代男性。約120人ずついる心臓と肺の待機患者のうち、同時移植を希望する4人から選ばれた。
心肺同時移植は海外では3000を超す実施例があるが、技術的に難しい面もあり、国内では2003年にようやく患者登録が始まった。脳死臓器移植は国内79例目。
摘出は17日午後2時20分、兵庫県災害医療センターで開始。心臓と左右の肺がつながった状態で取り出され、午後4時50分ごろクーラーボックスに入れて運び出された。
午後5時20分ごろ、兵庫県警のパトカーが先導するタクシーで阪大病院に到着。人工心肺を装着して手術室で待っていた男性への移植が始まり、午後7時45分ごろ血管などを吻合(ふんごう)。午後9時前には人工心肺が必要ない状態になった。
日本臓器移植ネットワークによると、提供者の心臓と両肺が移植に適しているかどうかなど厳しい条件をクリアする必要があり、これまで実施を断念したケースもあったという。
提供者の男性は16日夜、兵庫県災害医療センターで2回目の法的脳死判定を終えた。
肝臓は九州大で50代男性に、片方の腎臓と膵臓(すいぞう)は東京女子医大で40代女性に、もう片方の腎臓は兵庫医大で50代の男性にそれぞれ移植。小腸は該当者がなかった。
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20090118-OHT1T00018.htm