AP通信によると、細密な風景画で人気を集め、現代米国の国民画家といわれたアンドリュー・ワイエス氏が16日、米ペンシルベニア州フィラデルフィア郊外の自宅で死去した。91歳だった。
1917年、同州生まれ。病弱で学校に通えず、挿絵画家の父の手ほどきで絵を描き始めた。テンペラ画や水彩画を得意とし、当初は明るい色調の作品も好んだ。だが45年に交通事故で父を亡くした後、細かい筆遣いで米国の農村や大自然を忠実に再現、静かな中に孤独感の漂う独特の作風を確立した。
足の不自由な女性が広い畑を家に向かってはう姿を描いた48年の「クリスティーナの世界」は有名。ほかの作品に「冬」「さらされた場所」など。
生涯を同州やメーン州の田園地帯で過ごし、抽象表現主義やポップアートが流行する戦後の米美術界で孤高を保った。専門家の間では「イラストレーションにすぎない」と酷評されることもあったが、郷愁を誘う作品は国民の広い支持を得た。日本にもファンが多く、たびたび展覧会が開かれている。
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