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2009年01月18日(日) 00時07分

農林漁業で求人ラッシュ 募集1800人超える中国新聞

 派遣切りなどによる失業者が急増する中、後継者不足が続いていた農林水産業の求人がラッシュ状態だ。不況を人材獲得の好機とする狙いで、農林水産省によると農業法人や森林組合、水産会社などの求人は全国で千八百人を突破し、応募の問い合わせも二千件近く。

 「近年、これだけ農林水産業への就職に関心が集まったことはない」(農水省幹部)として、国や自治体、業界団体は相談窓口設置や研修支援など就労を応援する取り組みを強化している。

 農水省は昨年十二月二十四日、就職相談窓口を設けたが、失業者らからの電話が鳴りやまない状態。同日から今月十三日までに農水省や農林水産関係の全国団体に計三百八十件、都道府県農業会議や森林組合などに計千六百件の相談があった。

 農水省が業界団体から集約した今月十六日現在の全国の農林水産業求人数は計千八百十人。求人の急増を受けて実態を把握しようと急きょまとめたもので、内訳は農業関係が八百三十三人、林業が七百八十二人、漁業が百九十五人だった。

 石破茂農相は「求人情報と就職活動をマッチングすれば成果は得られる。今までそのシステムが整っていなかった」と就労促進に向けた態勢づくりに意気込む。

 「職を失った人も含め地元に帰りたいという相談は増えている」(全国農業会議所)、「最近の情勢は(漁業の担い手確保に)有利に働く。若い人たちに就労を呼び掛けたい」(大日本水産会)など、相談業務を手掛ける業界団体も期待を隠さない。日本養豚生産者協議会は全国の会員企業を雇用の受け皿として百人を緊急募集すると発表。トヨタ自動車の派遣契約を切られた人からの問い合わせもあったという。

 各地の就労相談会も盛況だ。「仕事がきつく、景気の良いときは見向きもされない」(全国森林組合連合会)といわれた林業が脚光を浴び、同連合会が九、十日に大阪で開いた説明会には千七百人が来場した。埼玉県が十六日に開いた就農支援セミナーも約二十人の定員が満員。二月開催分は定員を増やす。

 農水省は本年度第二次補正予算案と来年度予算案で農山漁村での雇用創出に向けた支援拡充を盛り込んだが「国の対応を待てない」と独自策を打ち出す自治体も相次ぐ。

 大分キヤノンなどによる非正規労働者の大量削減に見舞われた大分県は、就農希望者を受け入れた農家に月額二万五千円を支給する制度を拡充。神奈川県は本年度中に農林水産業の基礎技能を教える「雇用塾」を開き、鳥取県も百人以上を対象に研修などを支援する。長崎県は作業員を臨時雇用して耕作放棄地を復旧、新規就農者に貸し出す事業を始める方針だ。

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200901180080.html