「スズキ」などの自動車関連工場が集中する浜松市にある居酒屋「惇(じゅん)」(中区海老塚)で、「派遣切り」などで仕事や住まいを失った人に無料で夕食が提供されている。
常連客らも食材を持ち寄るなど、離職者たちへの支援の輪が広がっている。
今月13日。昨年末に仕事を失い、市内の神社で寝泊まりしながらハローワークに通っているという若い男性が「惇」を訪れた。経営者の吉田昌子さん(65)が食事を出すと、男性は「いただきます」と手を合わせた。男性が帰る際、吉田さんは「頑張りなさい」と声をかけ、カイロを持たせた。
吉田さんは若者たちが困っていることに心を痛め、「食べることさえできれば体を動かすことができ、職探しもできる」と決意した。最初は「持ち出し」を覚悟していたが、話を聞き付けた常連客らが現金や食材を持ち寄り、8日から無料提供を開始した。
メニューはご飯と豚汁に、日替わりで煮物や焼き魚などのおかずが付く。午後4時の開店から先着20人を目安に、申し出た人に無料でふるまう。毎日2人ほどが無料で食事をしているという。
スズキは5月までに、工場の非正社員全員の雇用を打ち切ることを決めている。ハローワーク浜松で昨年12月に受け付けた相談件数は、前年同期比5割増の6088件に上った。
吉田さんは、定休日の月曜を除き、サービスを当分続けるつもり。「温かい食事を用意しているので気軽に来てほしい。うちで食事をしたことがきっかけで仕事探しがうまくいってくれれば」と願っている。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20081209-206556/news/20090117-OYT1T00520.htm