阪神大震災で祖母を亡くした兵庫県西宮市の主婦富田めぐみさん(29)は17日、初めて長男出海(いずみ)ちゃん(1歳5か月)を連れて、神戸市中央区の東遊園地を訪れた。
あの日、祖母は全壊した木造アパートで、めぐみさんに覆いかぶさったまま息絶えた。めぐみさんは自分だけ助かった負い目に苦しんできたが、「おばあちゃんが助けてくれた私の命。ちゃんと、この子につながっているよ」と、祖母の名が刻まれた東遊園地の「慰霊と復興のモニュメント」の前で報告した。
中学3年生だっためぐみさんは受験勉強に集中するため、同市東灘区で一人暮らしをしていた祖母・石原文子さん(当時72歳)宅に泊まりに行き、震災に遭った。並んで寝ていた文子さんが布団の上からめぐみさんにかぶさったが、天井が崩れ、2人ともがれきの下敷きになった。「めぐ」「おばあちゃん」。互いに声を掛け合ったが、文子さんの声は時間とともに小さくなっていった。
「私がおばあちゃんを死なせたんや」。約4時間後に助けられためぐみさんは、その後、自分を責め続けた。
高校に入ると、「おばあちゃんと同世代の人に優しくしたい」と決心。卒業後、専門学校に通って介護福祉士になった。
2007年8月26日に出海ちゃんを出産。出海ちゃんが歩き始めた頃、自宅で小さな地震に気づいた。布団で眠るわが子に駆け寄り、とっさに覆いかぶさって、はっとした。「おばあちゃん、私も同じことをしている」。ずっと薬指につけている文子さんの形見の指輪を見つめ、胸がいっぱいになった。
めぐみさんは出海ちゃん、夫の了志(さとし)さん(29)と東遊園地のモニュメントを訪れた。出海ちゃんと一緒に「石原文子」の文字を指でなでながら、心の中で「元気な子に育つよう、天国からずっと見守っていてね。出海にも、命の大切さを伝えていくよ」と誓った。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090117-OYT1T00509.htm