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2009年01月17日(土) 01時54分

「癌研」13億4000万円の粉飾決算、融資確保目的で読売新聞

不正経理についての記者会見を終え頭を下げる安西邦夫・癌研究会理事長(右)ら=田中秀敏撮影

 国内屈指のがん専門病院を運営する財団法人「癌(がん)研究会」(東京都江東区)の安西邦夫理事長(東京ガス相談役)は16日、記者会見を開き、財団が2007年度の決算報告書で、収入を水増しするなどして約13億4000万円の粉飾決算を行っていたと発表した。

 銀行から融資を受けるため、虚偽の決算を作成したという。

 発表によると、決算の粉飾は前事務局長(65)が前常務理事(69)の承認を得た上で、財務部などの職員に指示して行われた。財団が経営する「癌研有明病院」(同)の07年度の財務について、架空の医療費の収入伝票などを作成して約8億9000万円を水増しする一方、業者に支払った薬代のうち、約4億5000万円分を帳簿から除外した。その結果、実際は約33億円の赤字を、約20億円に圧縮していた。

 財団は16日、同年度決算を修正する報告書を文部科学、厚生労働両省に提出した。

 同病院は05年3月、東京・西巣鴨から江東区有明に移転した際、用地購入費などとして金融機関から約317億円を借り入れた。さらに、薬剤費の高騰などが重なり、資金繰りの厳しい状況が続いていた。そうした中、年2回の賞与の際には各約10億円を銀行から一時的に借り入れ、半年ごとに返済してきたという。前事務局長は財団の調査に対し、「計画通りに収支が改善しないと、銀行との関係が悪化し、貸してくれないと思った」と説明した。

 前常務理事は昨年6月に退任。後任の常務理事が気づき、両省に報告していた。財団は今後、公認会計士らを入れた調査委員会を設け、再発防止策を作る。安西理事長は会見で「全く予期していなかった。(前事務局長と前常務理事は)責任感が強いタイプだったが、やってはいけないことをしてしまった。責任を感じている」と謝罪した。

 両省は財団が自発的に調査・報告した経緯を酌み、処分は行わない方針。文科省の担当者は「あまりにもお粗末。調査委員会の調査を見守りたい」としている。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090116-OYT1T00825.htm