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2009年01月17日(土) 21時32分

<春闘>トヨタ減産、他社も上積み…労使交渉の行方見えず毎日新聞

 深刻な景気後退を背景にした自動車メーカーの減産強化が、春闘にも影響を及ぼしている。トヨタ自動車は2〜4月の国内生産を前年より半減させる方針で、他の大手メーカーも減産を上積みする可能性が高い。春闘は15日にスタートしたばかりだが、春闘をリードする自動車業界の苦境で、賃上げや雇用安定に向けた労使交渉の行方はまったく見えない状況だ。【宮島寛】

 燃費の良い小型車を武器に昨夏までのガソリン高を乗り切ってきた日本メーカーも、金融危機が深刻化した昨秋以降は販売が激減。急激な円高にも見舞われ、トヨタでさえ09年3月期で1500億円の連結営業赤字に陥る見通しだ。富士重工業や日野自動車も09年3月期予想を連結営業赤字に下方修正し、日産自動車なども赤字に転落する見通しで、各社とも深刻な業績不振に直面している。

 年明け以降、販売環境はさらに悪化し、トヨタは2〜4月の国内生産台数を前年比4〜5割減にする方針。国内主要自動車メーカー12社の今年度の減産規模は、国内外合計で268万台以上に拡大した模様だ。

 減産強化を受け、トヨタは3月までに非正規従業員を前年同月の3分の1に当たる約3000人に減らす計画で、ホンダなど6社は非正規従業員をゼロにする。主要メーカーによる非正規従業員の削減数は約2万3000人に上る見通しで、「正社員の削減すら視野に入る」(ホンダの福井威夫社長)ほど雇用情勢は悪化している。

 こうした中、トヨタやマツダ、三菱自動車などは、減産に踏み切る工場に休日を設け、工場で働く正社員の1日当たり基本給を5〜20%程度引き下げ始めた。1人当たりの賃金を抑える代わりに雇用維持を図る狙いで、大手幹部は「雇用維持で手いっぱい。労組はまさか賃上げ要求などしないだろう」とけん制する。

 相次ぐ非正規雇用の削減や賃金カットで、労組側も一枚岩ではなくなりつつある。トヨタグループ各社の労働組合で構成する全トヨタ労連は、4000円以上の賃上げを要求する方針を決めている。国内最大のトヨタグループ労組の動向は、他産業の労使交渉に大きな影響を与えるだけに、組合執行部は「簡単に白旗は上げられない」と厳しい姿勢で交渉に臨む構えだ。だが、全トヨタ労連の中には非正規従業員を組合員にしている単組もあり、「非正規の削減が進んでいるのに、賃上げを声高に要求できない」との声も出ている。

 ◇春闘

 春季闘争の略。労働組合が統一要求を掲げ、賃金引き上げなど労働条件の改善を求め経営側と交渉する。今期は15日の日本経団連と連合の首脳懇談会で事実上スタート。8年ぶりにベースアップを求める連合に対し、日本経団連は「景気悪化でベアは困難」として対立しているほか、雇用問題も焦点になっている。2月18、19日に大手製造業の労組が経営側に要求書を提出して本格的に個別交渉が始まり、3月18日に経営側が一斉回答する見通し。

 ◇自動車各社の今年度の減産計画◇

トヨタ  100万台以上

ホンダ  38.7万台

日産   50万台以上

スズキ  27.5万台

マツダ  14.8万台以上

三菱自  20万台規模

ダイハツ 4.6万台

富士重  7万台

いすゞ  2.8万台

日野自  2.6万台

三菱ふそう 非公表

日産ディ  非公表

合計   268万台以上

※国内外の合計。一部は毎日新聞による推計

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