記事登録
2009年01月17日(土) 20時38分

【ガザ侵攻】イスラエル、真の狙いは「実質支配」 一方的停戦検討産経新聞

 【エルサレム=黒沢潤】イスラエル政府が17日、パレスチナ自治区ガザ地区でイスラム原理主義組織ハマスとの交戦を一方的に停止する可能性が高まっていることで、先月27日に始まった大規模戦闘は重大局面を迎えた。ただ、ハマス側は徹底抗戦を主張しており、停戦に向けてはさらに曲折がありそうだ。

 イスラエルが一方的停戦に傾いているのは、恒久停戦ではなく1年間の停戦に固執するハマスの主張によって、調停役のエジプトの停戦案が事実上“死文化”していることが背景としてある。

 だが、16日のイスラエルと米国との合意により、エジプト・ガザ間の密輸トンネルを通じてハマスの武器が流入する事態を極力阻止できる仕組みが整ったため、一方的停戦へと踏み切る環境が整うことになった。

 イスラエルと米国の合意は、任期が切れるブッシュ政権との間で実現したが、イスラエル紙ハアレツ(電子版)によれば、20日に米大統領に就任するオバマ氏も了解済みという。

 イスラエルとしては、オバマ氏の就任日を挟む形で戦闘を続け、世界が注目する「歴史的な」(ロイター通信)就任式に“泥”を塗るわけにはいかない。

 ハマスは計22日間の戦闘で、600〜700発ものロケット弾をイスラエルに撃ち込んでおり、残存するロケット弾は不足気味だ。豊富な武器を密輸した秘密トンネルも空爆でズタズタにされ、ガザ内の武器庫も徹底的に破壊された。ハマス幹部はなお、徹底抗戦を主張するものの、ハマスは十分“弱体化”したとする結論がイスラエル軍内で得られたのは間違いない。

 イスラエルは、エジプトを仲介としたハマスとの停戦を回避することで、ガザの封鎖緩和など、ハマスに有利な条項に縛られないことになる。また、多国籍部隊がガザとエジプトの境界に配備されることもなく、今後も“フリーハンド”の状態で、ガザを支配下に置くことが可能だ。イスラエルは18日、パレスチナ自治政府と境界管理に関する文書に調印する予定という。

 イスラエルは最終的に、エジプトを仲介させる形でハマスと停戦合意に達することに異存はない。今後も、ガザに部隊を駐留させ、ハマスから攻撃された場合には、これまで以上の猛攻撃を加えることも排除しないという脅威を与え続けることで、恒久停戦への端緒をつかみたい考えだ。

 ロイター通信によれば、イスラエル軍は17日午前、ガザ内で攻撃を強化。国連が運営する学校が巻き添えとなって、子供2人が死亡した。空爆開始以降のパレスチナ人の死者は1150人、負傷者は5100人に達した。

【関連記事】
【ガザ侵攻】イスラエル、一方的停戦か 米の決断後押し
【ガザ侵攻】ガザへの寄付呼び掛け
ガザ侵攻、対イスラエル外交関係凍結
【ガザ紛争】戦闘終結の仕方、複数浮上
米・イスラエル、ハマスへの武器供給阻止で合意

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090117-00000564-san-int