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2009年01月17日(土) 20時27分

国内金融に大型再編機運浮上 シティの日興売却示唆で風雲急産経新聞

 米金融大手シティグループが傘下の日興コーディアル証券を売却検討対象に位置づけたことで、国内金融界に大型再編の機運が浮上した。かつて日興の買収を検討したもののシティに奪われたメガバンク3行に、再びチャンスが巡ってきた格好だ。ただ、金融危機はメガバンクの経営体力も弱体化させており、買い手側も課題や制約を抱えての神経戦となりそうだ。

 買収の最有力候補と目されるのは国内金融最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)だが、関係者は「資金がなく、決算も厳しい状況。今は制約が大きい」と打ち明ける。

 同行は昨秋、米証券大手モルガン・スタンレーに約9000億円を出資したが、その後さらに金融情勢が悪化。世界的に株価下落が進んだ結果、同行は保有する有価証券の損失が膨らみ、平成21年3月期連結決算は初の最終赤字となる可能性もある。こうした厳しい状況下で、さらなる巨額投資に株主の賛同を得られるかどうかは不透明だ。

 日興はかつて三菱グループと親密だったが、平成10年にトラベラーズ(現シティ)と提携して離脱。当時の東京三菱銀行が11年に野村証券系の国際証券(現三菱UFJ証券)を買収し、三菱系の証券会社が入れ替わった数奇な経緯がある。

 その後、三菱UFJFGは日興コーディアルグループの買収も検討したが、1兆円を投じたシティに奪われた。今回、改めて日興買収に成功すれば、証券業務で個人顧客からの預かり資産は三菱UFJ証券との合計で計41兆円規模となり、首位の野村証券(68兆円)に近づくことができる。

 一方、みずほFGは「三菱UFJが動くなら負けられない」(関係者)と対抗心を隠さない。日興とみずほFGはかつて16年に資本提携し、みずほも日興買収を目指していた。

 みずほグループの新光証券とみずほ証券は合併計画が難航し、1年以上も延期されている。ただ、合併しても事業規模は日興にはるかに及ばず、成長性などの面で日興買収は有力な選択肢となる。

 さらに三井住友FGも日興に関心を寄せるが、金融危機で財務が急速に悪化し、自己資本比率が減少している状況は三菱UFJ、みずほと同じだ。メガバンク3行には買収価格をつり上げたくないとの思惑もあり、野村証券などを含むライバルの動向をにらんでの駆け引きが予想される。

 日興にとっては、メガバンクによる買収が実現すれば、銀行のブランド力や営業基盤を背景に収益力を向上させられる利点がある。

 ただ、三菱UFJFGとみずほFGは系列証券を持ち、三井住友FGも大和証券グループ本社と緊密な提携関係にある。日興が買収されれば、これらの証券会社と店舗や顧客が重複するため、「人員削減や店舗統廃合といったリストラは避けられない」(国内証券関係者)との指摘もある。

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