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2009年01月17日(土) 19時32分

<海賊対策>ソマリア沖海自派遣「見切り発車」へ毎日新聞

 東アフリカ・ソマリア沖の海賊対策をめぐり、政府は当面、3例目となる海上警備行動の発令によって海上自衛隊を派遣することになった。ただ、特定の船、潜水艦の領海侵犯に対応した過去2例とは異なり、今回は遠洋への長期派遣になるのに加え、不特定の海賊から商船を護衛するのが任務。新たな部隊運営を迫られるが、政府・与党の議論は粗いままで、多くの課題を残した「見切り発車」になりそうだ。

 海上警備行動を定めた自衛隊法82条は、地理的な制約を明記していない。しかし、北朝鮮や中国の領海侵犯への対応を想定してきた防衛省内には「長期の海外派遣を実施するには82条の条文はスカスカ」(首脳)との違和感が広がっている。

 初の護衛任務、重装備の海賊を相手にする点など、異例ずくめの割に政府・与党内の議論が深まっていないことへの危機感もある。

 インド海軍が昨年、海賊が乗り込んだ漁船を撃沈して人質が死亡したケースをめぐり、与党プロジェクトチームでは「自衛隊法でも可能」と容認する流れが一時でき、自衛官が過剰防衛に問われる恐れがあることを懸念した防衛省が軌道修正をはかる事態も起きた。

 「護衛艦を襲う海賊などいない」との楽観論の下で派遣を急ぐ考えが支配的になっているためとみられるが、浜田靖一防衛相は「あらゆる事態を想定すると簡単にくみすることはできない」と反論し、慎重な態勢整備を求めている。

 一方、海上警備行動の武器使用は、警察官職務執行法に準じて正当防衛と緊急避難に限定される。初の発令となった99年の能登半島沖の不審船では、海自護衛艦が警告射撃、P3C哨戒機が付近に爆弾を投下し、北朝鮮側まで追い出した。04年の中国の原子力潜水艦の際は領海を出た後の発令で、海自は発砲を回避した。

 01年12月、東シナ海で不審船からロケット弾を発射された海上保安庁の巡視船が船体を射撃。不審船が沈没する事件が起きたが、この時は海上警備行動は発令されていない。【松尾良】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090117-00000050-mai-pol