2009年01月17日(土) 16時23分
サプライズ満載だったゴールデングローブ賞(産経新聞)
アカデミー賞を頂点とする米映画賞レースの前半の山場、ゴールデングローブ賞がこのほど、ビバリーヒルズのビバリー・ヒルトン・ホテルで行われた。「ダークナイト」でジョーカー役を熱演しながら急死したヒース・レジャーに助演男優賞がおくられるなど話題に事欠かなかった一方で、力作そろいと評される今シーズンの映画界の中間報告としても興味深い結果となった。サプライズ満載だった同賞の結果を、改めて振り返ってみる。
■スラムドッグ4冠
激戦、混戦の予想で一致していた今年のゴールデングローブは、ふたを開けてみれば「スラムドッグ$ミリオネア」が、ノミネートされた作品賞、監督賞、脚本賞、作曲賞の4部門すべてをかっさらっていく「4の4」で圧勝。ブラッド・ピットが年とともに若返っていく不思議な男を熱演した「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」や、ニクソン元大統領の辞任後に行われたインタビューを描いた「フロスト×ニクソン」など、下馬評の高かった他候補作品を沈黙させた。
「スラムドック」の製作費はわずか14億円。一般受けする見込みがないとして一時はDVDのみのリリースまで検討されたあげく、11月にわずか10館で公開された。すでに興行収入は34億円にのぼり、100億円突破も夢ではない勢いだ。
「私がここにいること自体が、信じられない」。授賞スピーチでボイル監督は語ったが、今やアカデミー賞レースでもフロント・ランナーに躍り出た格好だ。
■インドが大騒ぎ
その「スラムドッグ」で作曲賞を受賞したのは、ボリウッドの映画音楽の大物、A・R・ラーマン。米タイム誌が「マドラスのモーツァルト」と呼んだ天才だ。
受賞スピーチで「信じられない」とはにかんだラーマン。インド人のゴールデングローブ受賞者は初めてとなった。
「次はオスカー」とインド・ムンバイでは大騒ぎ。ラーマン自身も「自分のためというより、インドの人々のためにオスカーを狙う」と意気込みを隠していない。
■ケイト・ウィンスレットがダブル受賞
「タイタニック」(1997年)の大ヒットなどでトップスターとして君臨するケイト・ウィンスレットだが、これまで不思議にゴールデングローブ、そしてアカデミー賞はノミネートどまりだった。
そんな理由から、今回まず「愛を読むひと」で助演女優賞を受賞した際、「あまり(賞レースに)勝つということには縁がなかった」と驚きの表情を浮かべたのも当然だった。
その後「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで」で主演女優賞を射止めると、本当に予測していなかったのか、やや言葉に詰まりながら、「アン(・ハサウェイ)、メリル(・ストリープ)、クリスティン(・スコット・トーマス)、アンジェリーナ(・ジョリー)、ごめんなさい」と、ノミネートされていたライバルに思わず謝ってしまうという、“初々しさ”をみせた。
■ミッキー・ローク復活
「もっともセクシーな俳優」などと呼ばれ、「ナイン・ハーフ」(1985年)などで一世を風靡(ふうび)しながら、その後長い低迷を続けていたミッキー・ロークが、「レスラー」での中年プロレスラーの演技で主演男優賞を受賞した。ブラッド・ピット(「ベンジャミン・バトン」)、レオナルド・ディカプリオ(「レボリューショナリー・ロード」)らを押さえての堂々の復活劇だ。
「過ちを犯せば、報いを受けるのは当然だ。おれは代償を支払ってきた。もう一度扉が開くまで、13、4年かかった」。往年のハンサムな面影などどこを探しても見当たらないところが逆にすごみさえ感じさせるロークは、受賞後の会見で、やや照れを交えつつ語った。
さて、アカデミー賞ではどんなドラマがみられるか。今月22日には、アカデミー賞のノミネートが発表される。(ロサンゼルス 松尾理也)
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