2009年01月17日(土) 16時23分
大学ラグビー総括 波乱、勢力図が激変(産経新聞)
早大の全国大学選手権連覇で10日に幕を閉じた今季の大学ラグビー。関東対抗戦での波乱、史上初の抽選で幕を開けた大学選手権など、例年以上に多くの話題が集まった。関東対抗戦とリーグ戦、大学選手権に分けて、今季を振り返った。(行場竹彦)
■波乱の対抗戦
関東大学リーグの対抗戦グループでは、早大の8年ぶりの敗戦。前年準優勝の明大が3勝4敗の6位に終わるなど、波乱が相次いだ。
連勝が53で止まった早大は11月に帝京大に敗れると、最終戦では今季不調の明大にも敗退。安定した強さを誇った前年とは違い、圧倒的な攻撃力と同時に試合ごとの波も激しかった。17トライの中浜、13トライの田中の両ウイングを中心に、対抗戦最多の57トライを積み上げたが、失トライも前年の7を上回る9。大味だった試合内容を表している。
明大は2連勝の後、5年ぶりに筑波大に敗れるとそこから泥沼の4連敗。伝統の「前へ」に加え、「縦横無尽」というスローガンで挑んだが、それが裏目に出た。新ルールでモールの引き倒しが認められたのも、FW陣を強みとしている明大にとっては痛かった。4年生の引退試合となった早大戦で「縦横無尽」の名に違わないラグビーを披露、9年ぶりに勝利したのが救いか。
その対抗戦を初制覇したのが帝京大。「大学最強」といわれるスクラム、2人の留学生を武器に常に安定した戦いぶりだった。チーム最多はWTB伊藤の6トライにすぎないが、合計で51トライを挙げ、どこからでも得点できたのも強み。創部39年目で5校目の優勝、大学ラグビー界に新しい歴史を刻んだ。
3位に入った日体大の健闘も目立った。早大と帝京大には敗れたが、他の6大学には勝利。新ルール下では、SO大沢のロングキックが大きな武器になった。特に明大戦では60メートルのPGを成功させ、観客の度肝を抜いた。
■リーグ戦は3強時代へ
リーグ戦グループでは、東海大が2年連続の優勝。関東学院大の不祥事で「たなぼた優勝」と揶揄(やゆ)された前年の屈辱を晴らすため、春から徹底的に基礎練習を積んできた成果を生かした。日本代表のFLリーチなどを中心に、個人能力の高さと磨きをかけた状況判断力で、見事に目標としていた「全勝優勝」を成し遂げた。
2位の法大、3位の関東学院大も東海大と互角の力を見せた。法大はBK陣の速さを生かした攻撃が光り、試合を重ねるごとに完成度を高めてきた。特に関東学院大戦でFB竹下が後半ロスタイムに逆転トライを決めた試合は見事だった。関東学院大は前年の不祥事の影響で、チーム練習を再会したのが4月になってから。夏合宿で初めて練習試合を行い、短い期間でよく仕上げてきた。東海大、法大にはチームの完成度の差で敗れたが、来年以降はさらに期待できるだろう。
■抽選で好取組続出
今回の大学選手権には史上初めて抽選による組み合わせが導入された。その結果、1回戦からドラマチックな対戦が続出した。
最大の注目を集めたのが、早大と関東学院大の一戦。前々回まで6回連続決勝で顔を合わせた両校が1回戦で激突。対戦が行われた熊谷には、ラグビー場史上3番目に多くの観客が押し寄せた。その試合では、早大の攻撃的なディフェンスが復活。関東学院大に付け入るすきを与えず完勝した。試合後に関東学院大の土佐主将が「ワセダが特別な相手といってくれたのがうれしかった」と見せた涙が印象的だった。
また、対抗戦で優勝した帝京大が唯一引き分けた慶大との再戦も1回戦で実現した。帝京大は後半にスクラムトライを見せるなどFW陣が力を発揮。因縁に決着をつけたが、終盤6点差まで迫った慶大の粘りも見事だった。
1回戦が盛り上がりを見せた半面、2回戦は力に偏りがあり、やや一方的な試合が多かった。大学選手権ベスト8による試合にもかかわらず、東海大がリーグ戦を合わせて最多の78得点で同大に圧勝したことからもそれがうかがえる。抽選を継続するならば、この点が今後の課題となるだろう。
■早大の復活で閉幕
中竹監督が「あの組み合わせで救われた」と話すように、宿敵を撃破した早大はその勢いのまま頂点へ駆け上がった。特に国立競技場では対抗戦の時と別チームのような戦いを見せた。準決勝は鋭いタックルで東海大自慢の攻撃陣を押さえ込み完勝。決勝ではNO・8豊田主将の2トライで帝京大に雪辱を果たした。FB田辺が選手権から復帰したことも大きく、BK陣も多彩な攻撃を繰り出した。抽選時に豊田主将が話した「強いところを全部倒して日本一を証明したい」という言葉を見事に実現する結果だった。
「本命」の前評判に違わず、初の決勝とベスト4進出を果たした帝京大、東海大も堂々たる戦いぶりだった。早大戦での敗因は「経験や伝統」と両校の監督は口をそろえた。チーム力には大差はなく、次は頂点に立ってもおかしくない。帝京大の岩出監督は決勝後「敗戦を次に生かせれば本当の負けではない」と話した。今回敗れたすべての大学はこの言葉を胸に、来季はさらにレベルの高いチームを作り上げてほしい。
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