2009年01月16日(金) 22時38分
「神戸医療産業都市構想」10年 さらなる発展に向け課題も(産経新聞)
阪神大震災後、医療産業を神戸経済の新しい柱にしようと、ポートアイランドで展開が進められてきた「神戸医療産業都市構想」が昨年10月、構想開始からまる10年を迎えた。この間、研究機関や企業の集積が進み、国内最大級の医療クラスター(集積拠点)として成長する一方、国際競争の激化など、さらなる発展に向けた課題も浮かび上がっている。
構想は平成10年10月、神戸の復興を託す新しい事業の一つとして検討が開始された。超高齢化社会を見据えた成長産業であることに加え、地震を経験して命の大切さ、医療の重要性を痛感した神戸にふさわしい産業と考えられた。
これまでに国や神戸市、第3セクターが運営する研究施設や病院など11の中核研究施設が相次いで完成。18年2月に完成した神戸空港も追い風となり、国内外の医療関連企業134社(今年1月現在)が進出した。これにより、計約3000人の雇用を生み出している。
市によると、17年度の経済効果は推計で409億円で、税収効果は12〜13億円。13〜17年度末までの累計の経済効果は1400億円以上と試算されている。
また、24年度には世界最速のスーパーコンピューターの本格稼働が予定されており、さらなる企業集積が期待される。
その一方で「次の10年」に向けた課題も待ち受ける。現在、進出企業の約半数は研究開発を目的に掲げており、製造業は約3割にとどまっている。研究成果から生み出された新たな医薬品や医療器具を製造や事業化に積極的に結びつける段階にはまだいたっていない。
今後こうした研究成果を製造に結びつけることができれば、雇用など直接的な経済効果が期待できるが、莫大(ばくだい)な資金と時間が必要なこともあり、難しいのが現状だ。
さらに国際間競争も激化している。中国・上海の「張江メディカルバレー」には約400社が集積するなど、諸外国では大規模な医療クラスターができている。
震災前、アジアと欧米をつなぐ東アジア有数の貿易港だった神戸港は、震災被害でコンテナ取扱量が激減。釜山や上海の勢いに押されて国際的な位置づけは下がり、まだ震災前の水準には達していない。
それだけに、神戸経済の中核として医療産業都市をさらに発展させるには、大阪府茨木市の「彩都ライフサイエンスパーク」など、関西全体で広域的な連携を強め、国際的な存在感を出していくことが必要。外国の都市との連携も求められている。
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