記事登録
2009年01月16日(金) 22時14分

【予算・リード】規模縮小でも政策的経費増 「都民に安心と希望を」と石原知事【予算(1)歳入、歳出】【予算(2)主な取り組み】【予算(3)定数削減】産経新聞

 東京都は16日、平成21年度の予算原案を発表した。一般会計の総額は6兆5980億円(前年度比3・8%減)で、5年ぶりの減少となった。世界的な金融危機に伴う景気悪化の影響で、21年度の都税収入は7520億円減となる見通しだが、基金の取り崩しや都債などで対応。予算規模が縮小するなか、政策的経費である一般歳出は前年度比2・9%増の4兆5422億円を確保し、都民生活に直結する雇用、医療・福祉分野に重点配分した。同日記者会見した石原慎太郎知事は今回の予算を「都民に安心と希望をもたらす予算」と位置付けた。

 ■歳入

 都税収入は、世界的な金融危機による景気悪化と国への税収移転で、13・6%減の4兆7577億円となり、過去最大の減収幅。都税の主力である法人2税(法人事業税、法人住民税)に限れば3割減の1兆7805億円となった。

 急激な税収減に対応するため、都債は4割増の3743億円を発行。地球温暖化対策推進基金など3基金から1085億円を取り崩した。都債は都の借金だが、起債依存率は5・7%で国の37・6%に比べて極めて低い水準にとどまっている。起債残高も6・3兆円(対税収比1・3倍)で、国の581兆円(対税収比12・6倍)に比べると、「はるかに健全な状態」(財務局)を維持している。 

 ■歳出 

 政策的経費である一般歳出は、大幅な税収減にもかかわらず、2・9%増の4兆5422億円を確保した。うち、人件費など継続的に支出される経常経費は2%増の3兆7554億円で、雇用・中小企業支援支援、福祉・保健分野に重点的に配分した。

 給与関係費は、3・7%減の1兆6256円。団塊世代の大量退職のピークが過ぎたため、退職手当は8・6%減となっている。

 投資的経費は4・8%増の7668億円で、5年連続の増加となった。骨格幹線道路の整備、施設の改築・改修、耐震化の推進などに重点配分。公債費・税連動経費などは15・8%減の2兆558億円。基金では、東京五輪開催準備基金に1000億円を積み増し計4089億円とする。

 ■周産期医療

 昨年の妊婦死亡問題を受けて、病院側が搬送拒否の主要理由にあげた新生児集中治療室(NICU)不足を解消するため、NICUを増床するなどして周産期医療体制を整備。また、緊急性を要する妊婦を必ず受け入れる母体救命対応の総合周産期母子医療センターの創設、搬送業務を円滑に進めるためのコーディネーターの配置を新たに実施する。(22億円)

 ■雇用・就業支援

 正社員として就職できず、非正規雇用で働き続ける求職者に対してのカウンセリングなど就職支援を強化。介護現場など人材を求めている企業とスキルを持った求職者のマッチング事業も拡大。区市町村と連携して、新たに公園管理など延べ約30万人の緊急雇用対策も行う。(151億円)

 ■中小企業対策

 制度融資に加え、中小・零細企業を対象に地域金融機関と都が連携した緊急の金融支援を行う。機械・設備を担保にした融資事業も実施。(2846億円)

 ■新型インフルエンザ

 大流行が懸念される新型インフルエンザ対策として、抗インフルエンザ薬の備蓄など医療機関における医療資器材の備蓄や、事業継続計画(BCP)の策定、医療機関に対する施設整備の補助、基礎研究の推進を実施。医療物資の確保や医療体制を整備し、新型インフルエンザから都民の生活を守る体制を整備する。(172億円)

 ■集中豪雨

 集中豪雨の影響で、下水道工事中だった5人の作業員が流されて死亡した事故などを受け、道路冠水事故防止対策などの集中豪雨時の緊急対策、降雨に伴う水位予測や洪水予報などの水防災総合情報システムを強化。水害発生の危険が高い地域に対する浸水被害対策や、局所的集中豪雨への緊急対策に取り組む。(59億円)

 ■耐震化 

 社会福祉施設、緊急輸送道路沿いの建築物、学校などの公共施設の耐震化促進事業を進める。(400億円)

 ■環境

 平成32年までに温室効果ガス排出量を12年比で25%削減する「カーボンマイナス東京10年プロジェクト」を推進(365億円)、校庭の芝生化など。(414億円)

 都は16日、平成21年度に1739人の職員定数の削減を行うと発表した。19年度からの3年間で4006人の削減となり、目標に掲げた4000人の定数削減計画を達成する。

 内訳は、知事部局1162人、交通局と上・下水道局で計750人、消防庁職員2人を減らす一方、学校職員を113人、警視庁で62人増やすとした。教員を含む職員定数の総計は16万5293人となる。

 また、経済不況に伴う企業の派遣切りなどで失業者が増えるなか、雇用対策の一環として22年度の新規採用予定者数を860人に増やす(21年度の約1・5倍)。必要に応じ21年度中に一部前倒しの採用も行う方針。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090116-00000620-san-pol