2009年01月16日(金) 22時01分
<ガザ情勢>停戦調停大詰め 成否かけ駆け引き続く(毎日新聞)
【エルサレム前田英司】パレスチナ自治区ガザ地区の情勢は、イスラエルが最重視するガザへの武器密輸対策に米国の関与が確実になったことで、エジプトが仲介する停戦調停も大詰めに差し掛かった。ただ、停戦条件の詳細を巡っては依然、イスラエルとハマスの見解に相違があり、調停の成否をかけた駆け引きが続いている。
◆武器密輸対策
イスラエルは今回のガザ攻撃で、ハマスに大打撃を与えたと評価。今後のハマスの「再武装化」を防ぐ最重要課題として、ガザへの武器密輸を阻止する態勢の構築を挙げる。全長11キロのガザ・エジプト境界の地下には数百本の密輸用トンネルがあるとされ、ハマスはこのトンネル経由でイランなどから武器を密輸していたと指摘。境界付近を連日空爆して、徹底的に破壊した。
イスラエルは当初、国際部隊が境界に駐留して密輸阻止に当たるよう主張した。しかしエジプトが「主権侵害」などと反発し、妥協策としてドイツなどが技術支援を打診している。イスラエル側にはエジプトがこれまで密輸阻止を徹底しなかったとの不満が根強く、米国の関与を求めたのはその反動だ。境界管理がどこまで徹底されるか見計らっている。
一方、ハマスは「いかなる外国軍の展開も受け入れない」との立場だが、ここにきて、同じイスラム教徒であるトルコ軍の展開には柔軟な姿勢に転じた。
◆停戦期間
イスラエルは恒久的な停戦を主張して譲らない。短期間の停戦ではいずれ、ハマスが再武装化を達成して、事態が逆戻りしかねないと懸念するためだ。ただ従来、情勢が平穏である限り反撃する必要性はないと主張しており、実質的に停戦状態を維持できる確証が得られれば、明確に「恒久」をうたわなくても妥協の余地はある。
ハマスにとって恒久停戦は、パレスチナの大義である「反占領」抵抗の放棄を意味するだけに、のめない条件だ。1年間の時限停戦ながら「更新可能」と提案し、一定の譲歩を示したとみられる。
◆ガザ境界検問所
ハマスは即時に検問所を再開して、ガザの封鎖解除につなげたい考えだ。昨年12月に失効した前回の停戦合意時にもこの目標を掲げたが実現せず、ハマスのガザ支配に対する住民の不満はくすぶっていた。パレスチナ人死者が1100人を超す事態に目に見える「成果」を迫られている。
イスラエルにとっては、武器密輸阻止や境界管理対策が最優先事項。ガザへの人道物資搬入は認めても、直ちに検問所を正常化するのには消極的だ。
◆反撃も留保か
イスラエルはハマスをテロ組織と認定しており、停戦を直接協議する「当事者」とみなしていない。このため、武器密輸を阻止する国際関与が確立し、自国に有利な条件がそろったと判断すれば、ハマスが正式に停戦合意を発表しなくても、一方的に攻撃を中止する可能性もある。イスラエルはこの場合、ガザからのロケット弾攻撃が継続した際に反撃する「権利」を主張するとみられる。
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