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2009年01月16日(金) 20時06分

<かんぽの宿>一括譲渡、暗礁に 総務相の「待った」で毎日新聞

 日本郵政の「かんぽの宿」70施設のオリックス不動産への一括譲渡が、鳩山邦夫総務相の「待った」で暗礁に乗り上げている。日本郵政は「なんとかして総務相の理解を得たい」としているが、総務相は「今のところ納得する可能性は限りなくゼロに近い」と明言する。総務相の認可が得られなければ一括譲渡は不可能で、落としどころは見えていない。

 「国民が出来レースと思う可能性がある。認可しない可能性は十分にある」

 総務相がオリックスへの売却見直しを求めたのは、6日夜だった。オリックスの宮内義彦会長が小泉純一郎政権で規制改革会議などの議長を務め、郵政民営化の議論にもかかわったことを挙げ、倫理的に問題があると指摘した。

 日本郵政は昨年4月、かんぽの宿の一括譲渡と雇用維持を条件に売却先を公募。27社が応募し、2度の競争入札を経て、昨年12月26日、オリックスと契約を結んだ。譲渡価格は約109億円。それまでの応札価格の中で最高額で、最後に残った1社に比べ、「数十億円高く、雇用条件も格段によかった」(日本郵政幹部)という。日本郵政とオリックスは「公正な競争入札を経ており、法的に何の問題もない」と話す。

 それでも、総務相が「李下に冠を正さずだ」と異議を唱えるのは、小泉構造改革の「影の部分」の象徴的な話題になるとにらんだためとみられる。

 総務相は、麻生派で「郵政造反組」の山口俊一首相補佐官ら麻生太郎首相周辺と相談していると公言しており、一連の発言を麻生首相もバックアップしている模様だ。3月に向けて進行中の郵政民営化見直し論議で主導権を握り、麻生政権の浮揚につなげる狙いがあるのではないか、という見方もある。

 今のところ日本郵政は、オリックスに一括譲渡する方針を変えていない。弁護士や不動産鑑定士など社外の専門家を交えた検討委員会を設置し、譲渡先の選定過程が公正であることを証明し、総務相に理解を求めていく考えだ。ただ、総務相の周辺からは「これだけこじれると、認可は難しいのではないか」との声が出ている。

 一括譲渡は、日本郵政グループ労働組合の要望でもある。施設ごとに売却すると、一部の施設が売れ残り、従業員の雇用を守れない可能性があるためだ。

 早期の一括売却にこだわるなら、入札をやり直すしかない。景気悪化に伴い不動産価格も下落しており、オリックス以上の条件が示される可能性は低い。日本郵政は、年間50億円規模の赤字事業の扱いに頭を悩ませている。【前川雅俊】

 【ことば】かんぽの宿 日本郵政が所有・運営する宿泊施設で、簡易生命保険の加入の有無に関係なく、誰でも利用できる。郵政民営化に伴い12年9月末までに譲渡、または廃止することが法律で定められた。70施設のうち59施設は赤字で、事業全体で年間40億〜50億円規模の赤字が続く。

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