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2009年01月16日(金) 00時29分

オバマ次期大統領就任控え…根深い米国の人種問題産経新聞

 【ロサンゼルス=松尾理也】米カリフォルニア州オークランドの地下鉄駅で警官に取り押さえられた黒人青年が、無抵抗のまま警官に射殺されるもようがインターネットで公開され、黒人住民を中心にした大規模な抗議活動に発展している。隠れていた人種対立が事件によってあぶり出される中、地元アラメダ郡地検はこのほど、事件後辞職した元警官を殺人容疑で逮捕した。オバマ新大統領の就任式を目前に控え、事件は米国が抱える人種問題の根深さを改めて浮き彫りにしているようだ。

 事件が起きたのは今月1日未明。地下鉄ホームでけんかが起きたとの通報でかけつけた複数の警官が、当事者の一人のオスカー・グラントさん(22)を取り押さえた。グラントさんは自由を奪われた状態だったが、そこで突然、ジョハネス・マーサリー巡査(27)が背中を撃ったという。マーサリー巡査は白人。

 このもようは乗客の携帯電話のビデオで撮影され、その後動画サイト「ユーチューブ」に流された。抗議の動きは拡大し、7日夜にはオークランドでのデモが暴徒化。投石や放火、略奪が発生し、逮捕者は約100人に上った。

 マーサリー巡査は「危害を加えられかねない状況になった」として辞職したが、地検は13日、殺人容疑で逮捕に踏み切った。AP通信によると、一般に職務中の警官による発砲は、死傷者につながった場合でも有罪に持ち込むのは困難とされており、罪に問われるのは極めて異例という。

 マーサリー容疑者の逮捕を受け、オークランドでは14日夜、抗議デモが再び暴徒化した。黒人のデラムス市長らの非暴力の呼びかけにもかかわらず、18人が逮捕される事態になっている。

 グラントさんの遺族の代理人は地元紙に、「もし取り押さえた相手が白人だったならば、警官はまず事情を聴くなどの対応をしていたはずだ」と、事件の背景に人種問題が横たわっているとの見方を示した。CNNテレビは「オバマ大統領の誕生が、米国の抱える人種問題の解決を意味するものではないという当たり前の事実を再認識するべきだ」との専門家の意見を伝えている。

 米国で、黒人に対する警官の暴力が暴動を引き起こした事例は数多い。1991年にロサンゼルスでスピード違反を犯した黒人男性、ロドニー・キング氏にロス市警の複数の警官が暴行を加えた事件は、今回の事件と同様、近隣住民が撮影したビデオが報道されて抗議が高まるという経緯をたどり、92年のロス暴動につながった。

 最近では、ニューヨークで2006年に結婚式を控えた黒人青年が警官から50発もの銃弾を受けて死亡する事件があった。関与した3人の警官が起訴されたが、08年にいずれも無罪となり、やはり大規模な抗議デモを引き起こしている。

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