中央大理工学部の高窪統(はじめ)教授(45)が東京都文京区の大学構内で殺害された事件で、高窪さんが倒れていたトイレがある4階の通路から1階にかけての階段に血液反応があったことが15日、警視庁富坂署捜査本部が現場検証した結果、分かった。捜査本部は、犯人が階段を使って逃走したとみて捜査。現場の後楽園キャンパス1号館に防犯カメラは設置されておらず、目撃者捜しを急いでいるが、なぜ研究室でなくトイレで襲われたのかなど、犯人像が絞り切れていない。この日、同キャンパスでは厳しい警備態勢の中、講義が再開された。
警視庁富坂署捜査本部は、15日も現場から立ち去った黒い服の男の追跡を続けた。
司法解剖の結果、死因は胸部を刺されたことによる失血死と判明。トイレに高窪さんの所持品や遺留品はなく、凶器の刃物も見つかっていない。
事件直後にトイレから立ち去った黒のニット帽をかぶり、眼鏡を掛けた男は身長170〜175センチで、20〜40歳くらいだったことが第一発見者の男子留学生の話で判明。着ていた黒い服はロングコートとみられることも分かった。
高窪さんが倒れていたトイレは1号館4階の中央にあり、近くには階段がある。捜査本部の調べでは、連続した血液反応は1階の建物内で途切れているという。犯人はトイレで高窪さんを襲った後、階段を使い1階まで下りた後、1号館の外に出たとみて、逃走経路の確認を急いでいる。
中央大後楽園キャンパスには4か所の門があり、出入りは自由だった。捜査本部や中央大の説明によると、高窪さんは14日午前10時ごろ出勤し、警備員から研究室の鍵を受け取っている。10時40分から始まる2限目、その後の3限目、4限目に講義があり、犯人は高窪さんの予定を把握して襲った可能性もある。
だが、現場のトイレと高窪さんの研究室があった1号館4階には、ほかの教授の研究室もあり、泊まり込んでいる人も含め十数人がいた。高窪さんに恨みを持つ者の犯行とすると、なぜ人の多いキャンパス内で狙ったのか、廊下などで待ち伏せすると人目に付く恐れもあり、謎が残る。
男子留学生は、トイレから出てきた犯人と見られる男とすれ違い、トイレ内で倒れている高窪さんを発見した。男はあわてた様子はなく、その場から階段の方へ立ち去ったという。
捜査本部は、トイレ内に残された複数の指紋を採取。階段に残された血液や、最寄り駅の東京メトロ後楽園駅のトイレから採取した血液も分析し、犯人につながる手掛かりがないか調べている。
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