第140回芥川・直木賞(平成20年度下半期・日本文学振興会主催)の選考会が15日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞は津村記久子さん(30)の「ポトスライムの舟」(群像11月号)に、直木賞は天童荒太さん(48)の「悼む人」(文芸春秋)と山本兼一さん(52)の「利休にたずねよ」(PHP研究所)に決定した。いずれも候補3回目の「三度目の正直」の受賞となった。
ベストセラー「永遠の仔」で知られる天童さんは、友人の死を救えなかった男が全国を回って死者を悼む旅を続ける物語で晴れの壇上に上がると、タイトル通り「悼む人」になった。「『悼む人』は賞を取ったわけではありません。選ばれ、授かりました」と謙虚に語ると、着想から完成させるまでの7年間で対面した死者を「改めてご冥福をお祈りしたいと思います」と悼んだ。執筆中は酒を控えていたが「お世話になった方々とお酒を飲めれば」と祝杯を心待ちにしていた。
一方、千利休の「茶」ではなく「恋」を作品にした山本さんは「恋は素晴らしい。恋はすてきです。こんな恋が出来たらなあ」と笑顔を見せた。
選考委員の井上ひさしさんは「生・死・愛を一度に相手にする天童さんと娯楽小説の王道を行く山本さん。この2作で直木賞の深さと幅が広がれば」と、2作品を評価した。
贈呈式は2月20日午後6時から東京・丸の内の東京会館で。正賞の時計と副賞100万円が贈られる。
◆天童 荒太(てんどう・あらた)1960年5月8日、愛媛県生まれ。48歳。明治大文学部卒業後の86年に「白い家族」でデビュー。これまでに「永遠の仔(こ)」(日本推理作家協会賞)で第121回、「あふれた愛」で第124回の直木賞候補になった。主な作品に「家族狩り」(山本周五郎賞)「包帯クラブ」など。
◆山本 兼一(やまもと・けんいち)1956年7月23日、京都市生まれ。52歳。同志社大卒。出版社、編集プロダクション勤務、フリーライターを経て、99年「弾正の鷹」が小説NON創刊150号記念短編時代小説賞佳作に。これまでに「火天の城」(松本清張賞)で第132回、「千両花嫁 とびきり屋見立て帖」で第139回の直木賞候補になった。京都市在住。
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