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2009年01月16日(金) 00時01分

芥川賞に津村記久子さん 直木賞は天童、山本さん中国新聞

 第百四十回芥川賞、直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が十五日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞は津村記久子つむら・きくこさん(30)の「ポトスライムの舟」(群像十一月号)に、直木賞は天童荒太てんどう・あらたさんの「悼む人」(文芸春秋)と、山本兼一やまもと・けんいちさんの「利休にたずねよ」(PHP研究所)に決まった。

 津村さんは大阪市生まれで会社勤めの傍ら小説を執筆。受賞作は工場の契約社員として働く薄給の女性らが、たくましく生きる日常をつづる。「派遣切り」など厳しい労働環境にある若い世代にエールを送る内容だ。

 津村さんは「皆さんにお世話になった。周りの人全員が取った賞です」と喜びを語った。

 天童さんは松山市生まれ。ベストセラーになった「永遠の」で知られる人気作家。受賞作は死者を悼む旅を続ける青年の姿を通して、死に軽重をつける社会を問う。

 山本さんは京都市生まれ。受賞作は千利休の切腹の日からさかのぼり、秘められた恋と美への執着を見詰めた長編。山本さんは「私の人生が折り重なった思い出の強いこの作品で、よくぞ受賞できた」と話した。

 芥川賞選考委員の宮本輝みやもと・てるさんは「底辺に近いつつましやかな生活をしている女性たちが、てらいなく表現されていて普遍性もある」と評価した。

 直木賞選考委員の井上いのうえひさしさんは天童作品について「人間の生と死と愛を一度に相手にした力作」、山本さんについては「小説の筋立てや読者を導く筆の力を顕彰すべきだ」と評した。

【写真説明】笑顔で記念写真に納まる(左から)直木賞の山本兼一さん、芥川賞の津村記久子さん、直木賞の天童荒太さん=15日夜、東京・丸の内の東京会館

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200901160069.html