2009年01月16日(金) 12時01分
阪神大震災:発生14年 「日ごろの備え」大切 各地で防災訓練や講演会 /神奈川(毎日新聞)
あすで発生から14年を迎える阪神大震災(95年1月17日)。甚大な被害の一方で、若者を中心にボランティア活動が活発化するきっかけにもなった。この未曽有の災害を機に制定された「防災とボランティア週間」が始まった15日、県内各地で、市職員の非常参集訓練や講演会などがあった。参加者らは改めて「日ごろの備え」の大切さを確かめ合った。
◇大地震の発生想定、課長補佐以上201人を抜き打ちで招集−−大和市
大和市は15日早朝、大地震発生を想定して課長補佐以上の管理職201人を抜き打ちで非常参集する訓練をした。約1時間半後までに約9割の職員が登庁した。
阪神大震災とほぼ同じ午前5時45分に、県東部を震源域とするマグニチュード(M)7・9の大地震が発生し、大和市で震度6強を記録した——との想定。職員から一報を受けた大木哲市長は午前6時半に登庁、管理職を非常招集し災害対策本部を設置した。
いずれも事前には職員に知らされておらず、状況変化に応じて的確な対策を取ることができるかをみる狙い。招集の指示を受けた各部長は緊急連絡網に従い電話で伝達。午前8時10分までに対象者の92・5%に当たる186人が登庁した。
災害対策本部の設置訓練では、職員の参集状況や各部署の初動態勢について大木市長に報告。大木市長は「火災やけが人への対応や対策本部と現場との情報伝達方法の仕組みについて、さらなる態勢の整備を図る必要があるのではないか」と反省点を指摘した。【長真一】
◇茅ケ崎産「キヌヒカリ」使い、レトルトおかゆ7000食備蓄
茅ケ崎市産の米「キヌヒカリ」を使ったレトルトパック入りおかゆが15日、市民文化会館でお披露目された。市は「防災時に不足しがちな水分を手軽に補給できる」として、災害時食料用に7000食分を備蓄する。
製品化された「レトルトおかゆ」は内容量250グラムで保存期間3年間の備蓄用。同会館であった防災研修会の参加者らが試食したところ「水分が多くて食べやすい」「塩分が弱く適度な味付け」などと好評だった。
製品化のきっかけは、水田の減少を食い止めるため市が昨春、食を巡る問題に取り組む地元のNPO法人「湘南スタイル」に相談を持ちかけた。「地産地消ができて備蓄食品にも最適」とおかゆが提案され、米の分量や塩味について研究を重ねていた。
湘南スタイルの藁品孝久理事長(62)は「乾パンを備蓄している自治体があるが、被災者は水分がないと食べられない」と指摘。パック入りおかゆについて「火がなくても食べられ水分も補給できる。しかも、地元の米を使えばコミュニケーションもふくらむ。多くの自治体が地元の米で備蓄用のおかゆを作ってほしい」と話した。【渡辺明博、写真も】
◇中越沖地震経験の関矢氏、震災の教訓語る−−川崎で危機管理講演会
防災とボランティア週間(15〜21日)にちなんだ危機管理講演会が15日、川崎市総合福祉センター(中原区)であった。新潟県中越沖地震(07年7月)の被災地・柏崎市松美町内会の関矢登会長が「災害に強いまちづくりをめざして」と題し、参加者約460人に震災の教訓を語った=写真。関矢会長は映像やスライドを使いながら、地震発生3日後には早くも、町内会の全440世帯に緊急アンケートをした経験を説明した。
アンケートで「けがの程度」「手伝いを希望するか」などの被災者情報を収集したことで、ボランティアを効率よく受け入れることができたと強調。「町内会単位で事前に準備したりして防災意識を高めることが必要」と呼びかけた。
講演会は市と市自主防犯組織連絡協議会の主催。参加した同市多摩区の山田輝子さん(71)は「実際に災害が起きたときにどうすればいいのか知りたくて来た。もっとこのような機会を増やしてもらいたい」と話していた。【中島和哉、写真も】
◇温泉・旅館組合と協定、2次避難場所提供 妊産婦、乳幼児らに−−厚木市
厚木市は22日、市内の飯山温泉旅館組合(西海幹男組合長)や東丹沢七沢温泉組合(山本淳一組合長)と災害協力協定を締結する。大地震などの災害時に、妊産婦や乳幼児ら要援護者の2次避難場所として温泉旅館を提供してもらう内容で、こうした提携は全国的にも珍しい。
市内の出産件数は1カ月当たり約180件に上り、災害時には多数の妊産婦・乳幼児が援護を必要とする見込み。ともに小中学校などの指定避難場所では共同生活が難しいとみられるため、温泉旅館に協力を呼びかけた。
災害時の要援護者のうち、高齢者や知的障害者らについては既に、市内14カ所の社会福祉施設と協定を結び、避難場所を確保している。【田中義宏】
◇故・小田さんと活動の市民ら集会 被災者支援法考える−−千代田区であす
自然災害に対応する被災者生活再建支援法成立の原動力となった作家、小田実さん(故人)=写真=と共に活動した市民が、阪神大震災(95年)から14年になる17日、東京都千代田区で市民集会「1・17『人間の国』へ」を開く。小田さんの妻玄順恵(ヒョンスンヒエ)さん(56)や超党派で国会議員も参加し、市民が立法化の原動力となった意義や同法改正などについて考える。
町田市の市民団体「小田実文学と市民運動を語り考える会」などが主催。07年7月に75歳で死去した小田さんの遺志を継ぎ、震災の教訓を東京で発信しようと初めて企画した。
同法は震災後、行政の無策を問う被災地の“怒り”が原動力となって98年5月に成立。小田さんの発した「これが人間の国か」は、立法化を求める被災者や市民の共感を呼んだ。以降、2度の同法改正を経て、年齢・年収要件が撤廃され、現在は住宅本体の再建など使途を問わず最高300万円が支給される。
一方で、半壊世帯や自営業者の店舗再建は適用外など課題も山積。昨年6月の岩手・宮城内陸地震など全壊世帯が少ない災害では、適用されないケースもあった。玄さんは「東京では阪神大震災の報道が少なく、教訓が十分に伝わっていない。政治にインパクトを与えたい」と話す。午後3〜6時半、千代田区麹町のカトリック麹町聖イグナチオ教会で。資料・カンパ代1000円。問い合わせは「コミュニティレストラン木々(もくもく)」(042・425・6800)へ。【吉川雄策】
1月16日朝刊
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090116-00000057-mailo-l14