2009年01月16日(金) 02時34分
<阪神大震災>8割「公的支援不満」 障害者33人調査(毎日新聞)
阪神大震災から17日で14年になるのを前に、毎日新聞は震災で心身に障害を負った「震災障害者」のうち、所在が把握できた33人を対象にアンケートを実施した。その結果、回答者の多くが暮らしや仕事など生活再建に深刻な影響を受け、行政による実態調査と公的支援の充実を約8割が求めていることが分かった。震災障害者の実情がまとまって明らかになるのは初めて。
調査は、神戸、西宮、芦屋の兵庫県内各市で被災した男性12人と女性21人(14〜86歳)に昨年12月から今月、面談(一部郵送)で実施した。本人が回答できない場合は家族に聞いた。
回答では、7割以上(24人)が仕事や勉学などの生きがいを失い、6割以上(21人)で世帯収入が減っていた。医療・介護費などが家計を圧迫し、生活設計の変更を余儀なくされた人は約8割(26人)に上った。「自殺を考えたことがある」は約4割(14人)を占めており、深刻な状態に追い込まれた経験のある人が少なくないことが分かる。
そのうえで、「行政による実態調査」は8割近く(25人)が「すべきだ」と答え、災害弔慰金法の「災害障害見舞金」(最高250万円)など現行の公的支援策は約8割(27人)が「良くない」とした。
震災では、約1万人が重傷を負った。しかし、国や自治体は追跡調査をしておらず、震災障害者の実態・実数は不明。災害障害見舞金の受給には、両腕または両脚の機能を失うなど厳しい要件があり、阪神大震災での受給者は63人にとどまる。
岩崎信彦・神戸大名誉教授(社会学)は「最も支援が必要な時期に、震災障害者は放置されてきた。自殺を考えた人が多数おり、14年たっても孤立感にさいなまれているのは、その結果だ。行政は実情を真摯(しんし)に受け止め、見舞金のハードルを低くするなど、制度改正を急ぐ必要がある」と指摘している。【震災取材班】
【ことば】震災障害者
阪神大震災(95年)で心身に障害を負った被災者。行政上の定義はなく、数年前から当事者らが使い始めた。総務省消防庁によると、震災による重傷者は1万683人。しかし追跡調査は行われず、震災障害者の実態は不明。自然災害で障害を負った人に国などが支給する「災害障害見舞金」(最高250万円)は、両腕または両脚の機能を失った場合などに限られ、改善を求める声が上がっている。
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