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2009年01月15日(木) 02時33分

<中大教授刺殺>出勤直後、空白15分 悲鳴や不審な音なく毎日新聞

 わずか10〜15分の間の凶行だった。東京都文京区の中央大学構内で理工学部教授の高窪統さん(45)が刺殺された事件。高窪さんは研究室の近くにあるトイレで、出勤直後に襲われたとみられる。丁寧な教え方で、学生の評判も高かった高窪さんを何度も刺し続けた殺意の背景にあるものは何なのか。

 14日午前10時前。高窪さんの研究室がある1号館4階の廊下に、前日夜から泊まり込んでいた別の研究室の学生たちが起き出してきた。

 その中の一人、浮田光樹さん(22)が振り返る。「現場のトイレに行ったが、個室のドアが全部開いていて誰もいなかった。10時10〜15分になり、仲間の一人がトイレに行こうとした時、出勤してきた様子の高窪先生とすれ違った」。高窪さんは午前10時、1階の警備員室で研究室の鍵を受け取り、4階に上がったとみられる。学生とすれ違った際、普段と変わった様子はなく廊下に不審な人物もいなかったという。同40分からの講義が迫っていた。

 浮田さんの研究室と現場のトイレまでは20〜30メートルしかない。悲鳴や不審な物音はしなかったという。しかし10〜15分後、スイスから来ている20代の男子留学生が、トイレの方向から眼鏡をかけたニット帽の男が歩いてくるのを見た直後、トイレに入ると、すぐそばに血まみれで倒れている高窪さんを見つけた。捜査関係者によると、体には執拗(しつよう)に切りつけたとみられる大小の傷が約15カ所もあったという。

 昨年12月に高窪研究室に入った男子学生(21)は「講義は非常に丁寧で、人柄が良いと聞いていた。これからいろいろ教わろうと思っていた。悲しすぎる」と話した。中央大のホームページなどによると、高窪さんは97年に中央大理工学部助教授となり、03年に教授に就任していた。

 高窪さんの親族らによると、高窪さんの妻は明治大理工学部の准教授。亡くなった父親が中央大名誉教授、叔父も青山学院大名誉教授という研究者一家だった。【川崎桂吾、内橋寿明、林哲平、山本太一】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090115-00000014-mai-soci