日本経団連と連合が15日、東京・大手町の経団連会館で今年初めての首脳懇談会を開き、春闘が実質的にスタートした。
連合が物価上昇を理由に8年ぶりにベースアップ(ベア)要求を打ち出したのに対し、経団連側は経営環境が悪化しているとして否定的で、激しい攻防が予想される。一方では、雇用情勢の急速な悪化を受け、雇用の安定に労使が協力するなどとした「共同宣言」を採択し、異例の幕開けとなった。
懇談会で、連合の高木剛会長は「景気を回復させるためにも個人消費の活性化を図っていく必要がある」と、ベア実施を改めて要求した。
これに対し、経団連の御手洗冨士夫会長は「厳しい現状の中で、賃上げが困難な企業が多い」と、一律の賃上げはできないと強調し、対立姿勢を鮮明にした。さらに「国際競争力の範囲内で考えないといけない」と述べ、企業の利益配分では、競争力を保つための投資を重視する考えを示した。
雇用の確保についても、連合が企業内の余剰資金を取り崩して雇用の原資に振り向けるよう求めているのに対し、経団連は「(内部留保は)将来の投資のため」(御手洗会長)との立場を崩していない。
今春闘では、一つの仕事を複数の労働者で分かち合う「ワークシェアリング」も主要課題になりそうだ。
御手洗会長が雇用安定のための「選択肢の一つ」と前向きな姿勢を示しているのに対し、労組側には、仕事の分かち合いに伴う賃下げへの警戒感が強い。経営側にも、実現性や効果を疑問視する声は多く、議論は難航が予想される。
一方、共同宣言は、「労使が真摯(しんし)に向き合い、雇用の安定と新たな雇用の創出に向けた政策を展開すべきだ」との姿勢を示した。その上で、賃金制度や働き方など中期的課題について協議するという。
政府に対しては、当面の対応として、リストラにより住まいをなくした労働者の住居の確保や、雇用保険の適用の拡大などを求めた。
春闘は今後、各労組の要求が2月中旬に出そろい、大手企業では3月中旬に回答がまとまる見通しだ。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20081209-206556/news/20090115-OYT1T00437.htm