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2009年01月15日(木) 00時00分

国内でも広がる本の中身検索読売新聞


グ−グルの「ブック検索」の結果画面

 インターネットで書籍の本文を検索・閲覧するための「内容検索」サービスが、徐々に普及してきた。最も広く使われているのは、Googleの「ブック検索」やAmazonの「なか見!検索」など。

 特にグーグルのサービスはAPIを公開しているので、一部ブロガーが気に入った書籍を紹介するために、ブログ上に「ブック検索」の機能を貼り付けて利用している。また紀伊国屋書店も、この11月から、「ブック検索」をオンライン販売用のウェブサイト上に貼り付け、一部書籍のプレビュー機能を提供している。

少ない「ブック検索」に対応本

 とはいえ書籍の内容検索は、まだ普及の緒に就いたばかり。例えばグーグルが「ブック検索」サービスを、日本で開始したのは2007年7月。これに対し当初、出版社の間には「本の中身をつまみ食いされ、買われずに終わってしまうのでは」という懸念が強かった。その意識はいまだに根強く、日本の書籍全体のうち、「ブック検索」に対応している本は、「まだ非常に少ない」(グーグル ストラテジック パートナー デベロップメント マネージャーの佐藤陽一さん)のが実態。アマゾンの「なか見!検索」も同様だ。

 これはアメリカの状況と対照的。同国では「ハリー・ポッター」のようなごく一部のメガヒット作品を除き、圧倒的多数の書籍が内容検索に登録している。この背景について佐藤さんは「アメリカの出版社も最初は日本と同じ懸念を抱いた。しかし(米国での)サービス開始から4年以上が経過した今では、ほぼすべての出版社が異口同音に『ブック検索に本を出したことで、売り上げが阻害されたケースは1件もない』と述べている。(ブック検索は)むしろ読者が本の存在を知るための、最初の情報源として認知されるようになった」と語る。

拙速な導入方法に反発

 年間8万点以上の新刊が出る日本でも、その大部分は読者の目に触れることなく、書店から消えていく。それらが読者の目に留まるために、内容検索は最適な手段といってもいい。実際、サイモン&シュースターなど米国の大手出版社は「自分たちが出している本の99%は、(内容検索によって)必ず誰かが見にくる」という調査結果を公表している。

 それなのに当初、これが出版社や著者の反発を買ったのは、グーグルの拙速な導入の仕方にあった。ブック検索の前身である「グーグル・プリント・ライブラリー・プロジェクト」は、大規模図書館の蔵書をスキャンして、それを全文検索可能にするところから始まった。ところがその際、グーグルが「出版社からの承諾の有無を問わず、図書館の蔵書をすべてデジタル化する」と表明したため、米国の作家組合らが著作権侵害に当たるとして、05年に提訴していた。結局、グーグルは08年10月、大手出版社5社などに総額1億2500万ドルを支払うことで和解に達した。グーグルは現在、出版社や著作権者の許可を得て、ブック検索に本を登録している。

 このようにグーグルには「とりあえずサービスを開始して、もしも社会との摩擦が生じた場合には軌道修正する」という姿勢が目立つ。出版業界が懸念を抱いたのはそのためで、書籍の内容検索自体に問題があるわけではない。不振にあえぐ日本の出版業界も、もっと積極的にこれを活用するのが得策だろう。(KDDI総研リサーチ・フェロー、小林雅一/2008年12月24日発売「YOMIURI PC」2009年2月号から)

http://www.yomiuri.co.jp/net/frompc/20090114nt1a.htm