2009年01月15日(木) 11時39分
震災機に支援活動 神戸大都市安全研究センター研究員、藤室玲治さん(産経新聞)
「自発的に問題を見つけてかかわり続けていける人材を育てていきたい」。神戸大都市安全研究センター(神戸市灘区)の学術推進研究員、藤室玲治さん(34)は、阪神大震災の直後に避難所で初めて体験して以来、ボランティア活動を続けてきた。2月からは神大に開設される「学生ボランティア支援室」の専属コーディネーターとなり、14年間の経験を学生たちに伝えていく。
「どこを見てもがれきの山でまだ火がくすぶっていた。焦げ臭いにおいが立ちこめて、見慣れたはずの街並みは一変していました」
震災当時、神大の2年生だった藤室さんは、発生翌日に避難所となった母校の兵庫高校(同市長田区)へ向かう道すがら目にした光景を今でも忘れることができない。
藤室さん自身は神戸市西区の自宅は無事で大きな被害はなかったが、連絡の取れない友人の安否を確かめに、歩いていったのだ。
たどり着いた高校では、被災者たちが協力し合って避難所設営や救援物資の仕分けなどをしていた。知識や経験がなくても「できる人ができることを」という姿勢に刺激を受けた。気付けば、自らもほかの学生らとともに自然に活動に参加していた。
しかし、2カ月を過ぎるころには授業が始まった大学生たちが次々とボランティアの現場を離れ、藤室さんも学生生活に戻った。しかし疑問がわいた。「一時的なボランティア熱で終わらせていいのか」。友人らとともにサークルをつくり、仮設住宅の訪問や復興住宅でお茶会を開くなど、ボランティア活動に奔走した。また、学内で今も活動を続ける「学生震災救援隊」の立ち上げにも参加した。
大学院に進学後は、被災者支援だけでなく学童保育やホームレス問題、障害者の自立問題などにも積極的にかかわった。
平成16年の中越地震や19年の能登半島地震の被災地では、仮設住宅で足湯を実施したり、雪かきを手伝う中で、後輩の学生ボランティアにさまざまなことを伝えた。
昨年7月、藤室さんの学生ボランティア活動支援の構想が、文科省から補助金が拠出されるプログラムの一つに選ばれた。2月には学生支援の実質的な窓口となる「学生ボランティア支援室」が立ち上がり、藤室さんが活動をとりまとめていくという。
「震災を知らない世代の後輩たちが『もっと被災地で活動したい』と言ってくれることが一番うれしい」。震災で生まれたボランティアの輪は大きく育ち、14年がたとうとする今も確実につながり続けている。
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