日本経団連の御手洗冨士夫会長と連合の高木剛会長は15日、社会不安を招いている雇用情勢などについて東京都内で意見交換し、今春闘が事実上始まった。非正規労働者の雇用打ち切りが問題となる中、両者は政府に雇用関連のセーフティーネット(安全網)整備を求める労使共同宣言を発表し、雇用創出で共同歩調をとる方針を強調した。
共同宣言は2001年10月以来。春闘本番前に労使が協力姿勢を示すのは異例だ。ただ、賃上げ交渉では溝の深さがあらためて表面化した。
両首脳は会談で世界的な不況の広がりで、企業業績が急速に悪化し、雇用削減の動きが続いていることから、今後雇用の安定や景気回復に向けて労使が最大限の努力をすることで合意した。
雇用問題の解決を図るため、経団連と連合が連携し、具体策の検討を進めることも確認した。
共同宣言は、政府に対して緊急対策を要望。不況で業績不振の企業が休業などで従業員の雇用を維持した場合に、国が賃金の一部を支払う雇用調整助成金や雇用保険の失業給付などの拡充、失業者に対する住宅確保を早急に行うべきだとした。
中長期的な課題としては医療、介護、保育、農業分野で新規雇用の創出を求めた。競争力強化につながる物流・交通網の整備、公共施設の耐震化も打ち出した。
連合側は非正規労働者の雇用打ち切りが急増している問題について、一連の雇用法制の規制緩和が原因と指摘。労働者派遣法改正の検討を提起した。
企業の導入例が出始めている、労働時間と賃金削減を組み合わせ、仕事を分け合って雇用を維持するワークシェアリングは、今回の会談では議題にならず、今後の検討課題とした。
春闘の賃金交渉については、高木会長が「内需の核となる個人消費の活性化を図ることは景気回復の大きなポイントになる」として、物価上昇を反映した前年以上の賃上げを要求。御手洗会長は急速な景気後退を背景に「今年は例年以上に厳しい労使交渉になる」と賃上げは困難との認識を示し、平行線をたどった。
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