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2009年01月15日(木) 21時26分

<薬害肝炎>和解合意から1年 国の同意、2割が不透明毎日新聞

 薬害C型肝炎訴訟の原告約1400人のうち、被害者救済法に基づく和解に国が同意するかどうか未定の被害者が、全体の2割の約270人に上ることが、薬害肝炎弁護団のまとめで分かった。原告側と国の和解基本合意から15日で1年になったが、同法の「一律救済」の理念とは裏腹に、被害の認定は狭き門になっている。

 薬害肝炎被害者は、病状に応じ1200万〜4000万円の給付を受けられるが、その前に国と裁判上の和解が必要になる。1年前、原告は210人だったが、その後に提訴が相次ぎ、厚生労働省によると、これまで提訴した原告は1444人。うち680人は和解が成立した。

 一方で、原告側が必要な証拠を提出したのに、国側が和解を保留するケースも増えている。弁護団によると、保留のケースは(1)血液製剤フィブリノゲンを接着剤として調合した「フィブリン糊(のり)」で感染した(2)ウイルス処理が比較的有効だった時期(85年8月以前)に投与され、大量の輸血も受けた(3)医師らの投薬証明だけでカルテなどがない−−に大別される。今後裁判手続きが進む原告も含め、(1)が約160人、(2)が約10人、(3)が約100人に上るという。

 厚労省医薬品副作用被害対策室は「和解を拒否するつもりはない」としつつ、「フィブリン糊感染では判決が出ておらず、因果関係の判断ができない。年度内に国としての目安を示し、個別の対応を決めたい」と話す。カルテなどの記録がない原告については、投薬証明に加え、医師らを尋問したうえで判断するという。

 これに対し弁護団は「国や製薬会社の対応の遅れで、血液製剤投与を証明できる患者は被害者の一握りしかいない。救済法の立法趣旨からすれば、できるだけ幅広く被害認定をすべきだ」と主張している。【清水健二】

 ◇40年前感染 被害証明難しく

 1万人以上いるとされる薬害C型肝炎被害者にとって、救済までのハードルは高い。肝がんを患う新潟県小千谷市の和田イネさん(76)は、40年以上前の診療記録が病院に何もなかったが、周囲の協力で出産に立ち会った元助産師を捜し出し、被害の証明に光が見えた。「治療費の心配なく余生を過ごしたい」と和解に期待する。

 長女を産んだのは64年12月。出血で寒気が止まらず、止血剤を使われた記憶があるが、母子手帳には「中等量の出血」としか書いていない。

 あきらめていた昨春、病院の助産師だった近所の女性が、元同僚の篠田キクイさん(83)と連絡を取ってくれた。「おたくさん、覚えてます。母子手帳の記録も私が書きました」。篠田さんはしっかりとした口調で、当時、新薬としてフィブリノゲンが納入され、中等量の出血なら確実に使用していたことを、詳細に語った。

 国に被害を認めてもらうには、投薬証明を書くだけでなく、裁判で尋問を受けねばならない。篠田さんは「人の命の問題」と、証言台に立つことを快諾した。「そこまではできない、と医師が断り、原告になれない被害者が大勢いる」と全国弁護団副代表の山西美明弁護士は明かす。

 弁護団は大阪地裁を中心に、特定個人への投与の記憶がなくても、当時の治療方針を医師が証言して投与事実を裏付ける立証を試みている。山西弁護士は「一人でも救済するために、さまざまな手法を考えたい」と話す。

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