2009年01月15日(木) 21時10分
ガス紛争長期化へ ウクライナ大統領選にらみ徹底対決(産経新聞)
【モスクワ=遠藤良介】ロシアとウクライナの“ガス紛争”は、ロシアが欧州向けガス供給再開を約束した後もガスが欧州に届かず、両国が非難合戦を続けている。ロシアがウクライナ向けのガスを停止して14日で2週間。問題が長期化する背景には、ウクライナで今年末にも予定される大統領選をにらみ、親露派勢力を支援するロシアとウクライナの親欧米政権がガス問題で譲れない政治的事情がある。
両国は欧州連合(EU)などの国際監視団を受け入れることで合意し、ロシアは13日にウクライナ経由パイプラインでの欧州向け供給を再開したとされる。しかし、15日午前までに欧州諸国へはガスが到達しておらず、双方は「ウクライナ側が意図的にガスを止めている」「ロシアが少量のガスしか流していない」などと主張している。
欧州を“人質”にしてまで両国が泥仕合を続けるのは、ガス問題がウクライナを二分する親露派と親欧米派の主導権争いに直結しているためだ。ウクライナでも経済危機が深まりを見せる中、「オレンジ革命」(2004年)で誕生した親欧米のユシチェンコ政権はロシアの要求するガス価格を飲めない状況にある。ガス価格は石油価格に半年ほど遅れて連動するため、3カ月分とされるガス備蓄を盾に、ガスの国際価格が下がるのを待つ構えだ。
他方、天然ガスを政治的武器として旧ソ連圏での影響力回復を目指すロシアは、すべての非をウクライナに押しつけ、欧州の離反と親露派政権の樹立をもくろむ。ウクライナを「信頼のおけないトランジット国」と言いはやし、ドイツなど西欧諸国に直接、ガスを供給するバルト海底パイプライン敷設への支援獲得を狙う。
両国間のガス供給に謎多き仲介企業「ロスウクルエネルゴ」が存在している点も焦点だ。
同社はオレンジ革命に先立つ数カ月前に設立され、露国営天然ガス独占企業ガスプロムと2人のウクライナ人が折半で保有する。同社を通すことでウクライナのガス消費者価格はロシアとの契約額の2倍近くにも上っており、同社の膨大な転売利益が親露派「地域党」に流れている疑いが強い。独立系シンクタンク「CASE」のゲラシモビッチ氏は「ロスウクルエネルゴ社がロシアの政治・経済的道具であるのは間違いない」と指摘する。
ユシチェンコ政権は09年のガス価格をロシアの要求する1000立方メートルあたり450ドルの半額以下である同200ドル強に抑えたい考えで、親露派を利する仲介会社の廃止も求めている。双方の隔たりは大きく、“ガス紛争”は、出口の見えない状況に陥ったままだ。
【関連記事】
・
ガス紛争で欧州首相ら訪露 プーチン首相と会談へ
・
ガス供給問題Q&A 事業透明性「?」
・
ガス紛争で影響拡大、東欧で市民生活にも影
・
【素顔のロシア】人ごとでない“ガス紛争”
・
ウクライナ経由の供給停止 露、欧州向けガス
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090115-00000614-san-int