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2009年01月15日(木) 20時43分

「悼む人」で直木賞受賞 天童荒太さん(48)産経新聞

 「悼む人」は7年前に“悼む人”が天童荒太さんに「降りてきた」ときに始まる。創作ノートにタイトルの一行を書いてから「何をもって悼むというのか」「リアリティーを含めて、深めるためには必要だった」と、この物語を紡ぐためには長い時間が必要だった。

 全国の人が亡くなった場所を訪れて、悼むという行為を続けるために放浪している青年、坂築静人を中心に、周辺の人物によって、生と死について深く考えさせられる作品だ。

 天童さんは物語の主人公の静人と同じように3年間日記を付け、資料を集め、地図を頼りに現場を歩き、辛く厳しい夜を経験し、自身も“悼む人”になった。「静人が5年かかったように、同じように時間が必要だった」と、時は流れた。

 「自分が死に近づいていたことが分かった」「生きていることのむなしさが分かった」「取り憑(つ)かれた感じがあった」と、天童さんは言う。それは「これを作品にできなければ、作家になる意味がない。大切な作品になる」と、思っていたからだ。作品になるかどうかは完成するまで分からなかったという。

 「心の底の底に入っていけるのは活字だと、信じている。だから大事にしたい」という。活字を刻みつけるような作品になっている。書き続けている間は、酒も飲まなかった。まさに「悼む人」のストイックな作品世界のような生活を続けた。

 「こういう人がいてくれたら。自分のヒーローを見た。それが結実した。この人を追いかけられて幸せだった」と。3回目の直木賞候補での受賞。「ありがたいですね。多くの人の協力を仰ぎ、支えてくれた人がいっぱいいるので、報いることができ、そういう人たちに喜んでもらえる」(松垣透)


 (てんどう・あらた) 昭和35年、愛媛県生まれ。明治大学文学部演劇学科卒。天童の名前で応募した「孤独の歌声」が日本推理サスペンス大賞優秀作。「家族狩り」で山本周五郎賞。「永遠の仔」で日本推理作家協会賞。ほかに「あふれた愛」「包帯クラブ」など。

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