記事登録
2009年01月15日(木) 20時37分

中央大教授刺殺 犯人は大学内に精通? 階段に血痕、逃走路か産経新聞

 中央大学後楽園キャンパス(東京都文京区)で理工学部教授の高窪統(はじめ)さん(45)が刺殺された事件で、殺害現場となった1号館4階男子トイレから中央階段にかけて微量の血痕が残っていたことが15日、警視庁富坂署捜査本部の調べで分かった。1号館にはエレベーターもあるが、犯人は返り血を浴びたまま階段で逃走した可能性が高い。人目の多い昼間のキャンパスで、高窪さんは出勤直後の約10分間に襲われたとみられるが、有力な目撃は今のところ1件。捜査本部はキャンパス構内や高窪さんの行動に詳しい人物の犯行とみて、犯人像の絞り込みを急ぐ。

 ■迷わず選ぶ?

 高窪さんは14日午前10時20分ごろ、トイレの小便器近くでうつぶせに倒れているのを、20代の男子留学生に発見された。背中や腹など十数カ所を執拗(しつよう)に刺されており、周囲には血だまりが広がっていた。留学生は高窪さんを発見する直前、20〜40歳で身長170〜175センチ、黒っぽいニット帽に黒のコート、眼鏡姿の不審な男とすれ違っていた。

 「男はその後、エレベーターには乗らず、中央階段に向かったようだ。足早に立ち去る感じだった」

 留学生は捜査本部の事情聴取にこう説明した。1号館4階は中央部分に階段、廊下を挟んだ向かい側に男女のトイレとエレベーターがあり、左右の廊下沿いに研究室が並ぶ。血痕はトイレから階段方向にまっすぐ続いており、逃走経路にエレベーターではなく迷わず階段を選んだとみられる。

 ■空白の10分間

 高窪さんは午前10時40分から2時限目の講義が入っていた。自宅を午前9時ごろに出て、午前10時ごろに1号館1階で研究室の鍵を受け取っている。

 前日から4階の研究室に泊まり込んでいた男子学生(21)は午前10時5分ごろ、トイレに行こうとして廊下で高窪さんを目撃した。「研究室の鍵を持っていて、特に変わった様子はなかった」。高窪さんは鍵を手に研究室に向かうところだったとみられる。

 別の4年生の男子学生(22)は午前10時10分ごろトイレに入ったが、個室はすべて開いており、待ち伏せしているような人の気配はなかったという。

 こうした証言から、犯行時間帯は午前10時10分ごろから留学生が高窪さんを発見する午前10時20分ごろまでの約10分間とみられる。「講義日程などの高窪さんの行動パターンを把握し、トイレ付近で待ち伏せするなどして突然襲った可能性がある」(捜査関係者)

 学生らによると、1号館の出入りは自由だが、限られた学科の研究室があるだけで、見知らぬ人物がいれば目立つという。

 ただ、不審な男の目撃情報は留学生の1件だけにとどまり、この留学生も含めて高窪さんの悲鳴や叫び声を聞いた学生はいない。事件当時、4階には複数の学生がいたことから、事件前後に犯人を目撃している可能性もあり、捜査本部は聞き込みを続けている。

 ■足取りは?

 キャンパスを出た後の犯人の足取りもはっきりしていない。

 大学から北西に約200メートル離れたコンビニエンスストアの防犯カメラには、留学生が目撃した男に似た黒い服の人物が、店の外を大学から池袋方向に歩いていく姿が写っていた。

 そのコンビニから北西に1キロで東京メトロ茗荷谷駅、南に約1キロでJR飯田橋駅につながり、コンビニ前の国道にはバスが走っているため、逃走経路は無限に広がる。捜査本部は、大学からしばらく徒歩で逃走した可能性もあるとみて、大学周辺の防犯カメラの解析を急ぐ。

 一方、大学を挟んでコンビニと真逆の東京メトロ後楽園駅では、男子トイレの大便器に血痕が付着しているのが見つかっている。

 犯人が高窪さんの返り血を浴びた衣類を着替えた可能性もあり、捜査本部で血痕の鑑定を行うなど関連を調べている。トイレが駅改札を通過した中にあるため、犯人が地下鉄で逃走した疑いも視野に入れている。

 「怨恨(えんこん)の線は捨てきれないが、今のところ高窪さんをめぐるトラブルは見当たらない」と捜査幹部。現段階で犯人像は絞り切れず、恨み以外の可能性も視野に捜査している。

【関連・中央大事件】
トイレから階段に血痕 犯人、階段で逃走か
恨み?執拗に背中刺す
大学が対策本部設置 本部長「痛恨の極み」
「優しい先生、なぜ殺されたのか」学生ら動揺広がる
「何が起きたのか」休み明けキャンパスに衝撃

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090115-00000607-san-soci