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2009年01月15日(木) 19時50分

<芥川賞>津村さん 直木賞は天童さんと山本さんが受賞毎日新聞

 第140回芥川・直木賞(日本文学振興会主催)の選考委員会が15日、東京・築地の「新喜楽」で開かれ、芥川賞が津村記久子さん(30)の「ポトスライムの舟」(群像11月号)に、直木賞が天童荒太さん(48)の「悼む人」(文芸春秋)、山本兼一さん(52)の「利休にたずねよ」(PHP研究所)に決まった。

 芥川賞の津村作品は「契約社員」「ワーキング・プア」の日常を描く。作品は雇用不安や金融危機を抱える世相への問題提起でもある。29歳の女性主人公は、化粧品の工場で、キャップのしまり具合を確認する仕事に就いている。時折、絶望感に襲われるが、女性の仲間と助け合いながら、前向きの姿勢は崩さない。

 ユーモアあふれる関西言葉とともに、厳しい労働環境下での一つの生き方を提示している。「修正不可能な格差を是正すべきだ」。就職氷河期、転職を経てきた津村さんの言葉は重い。

 一方、直木賞に決まった天童さんは愛媛県生まれ。映画の脚本などを手がけたのち作家に。96年「家族狩り」で山本周五郎賞。00年にはベストセラーになった「永遠の仔」で日本推理作家協会賞。東京都在住。

 天童作品は、人が亡くなった場所を訪ねて悼む旅を続ける青年の姿を描いた長編小説。事件、事故、戦争などで現代にあふれる人の死と、その死を悼むことの意味について真摯(しんし)に問いかける。

 山本さんは京都市生まれ。出版社勤務、フリーライターなどを経て、02年「白鷹伝」でデビュー。04年「火天の城」で松本清張賞。他に「雷神の筒」「千両花嫁−−とびきり屋見立て帖」。京都市在住。

 受賞作は、千利休のわび茶にかけた美意識と人生の軌跡を丹念に描き出す歴史小説。切腹の場面から過去にさかのぼり、放蕩(ほうとう)の果てに誰も及ばない美への執着を見せる利休の姿に大胆に迫っている。

 贈呈式は2月20日午後6時、東京・丸の内の東京会館で開かれ、正賞の時計と副賞100万円がそれぞれ贈られる。【棚部秀行、内藤麻里子】

 ◇「大きく成長」津村作品

 芥川賞選考委員の宮本輝さんは「非常につつましやかな生活を送る女性が、縁に動かされていく様子をてらいのない文章でよく描いている。こういう女たちの生活は、時代が変わろうとも文学的に不変だ。これまでの2作に比べて、文章力も小説としての組み立ても大きな成長が認められる」と述べた。

 ◇「苦闘の様子が」天童作品

 直木賞選考委員の井上ひさしさんは「天童作品は作家にとって最も大事な生と死と愛を一度に相手にし、悪戦苦闘した姿が作品と重なった。山本作品は時間をさかのぼりながらある一点に引っ張っていく小説の構成が巧みだ」と評した。

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