奈良県の医師宅放火殺人の調書漏えい事件で、調書を引用した「僕はパパを殺すことに決めた」(講談社)の著者でフリージャーナリスト草薙厚子さん(44)が14日、奈良地裁(石川恭司裁判長)に出廷し、「情報源は被告」と証言した。
事件では、医師の長男(18)を鑑定した精神科医崎浜盛三被告(51)=京都市=が秘密漏示罪に問われているが、草薙さんは、これまで取材源は明かしていなかった。ジャーナリストが法廷で取材源を明らかにするのは異例。
証言後、奈良市内で記者会見した草薙さんは「調書を見せたのは正当な行為だという弁護側の無罪主張に協力するためだった」「わたしは逮捕、起訴されても構わない。崎浜被告を自由にしたいとずっと考えていた」と話した。
この日の法廷で、草薙さんは、調書の入手経緯や著書の出版状況について検察側の尋問に答え「明らかにする方が被告の利益になると思う」と述べ崎浜被告の名を出した。また「調書は公文書。重大な事件で国民に知らせるべき資料」と主張、そのまま引用したことについて「読者により真実性を実感してもらいたかった」と説明した。
弁護側の尋問に、調書をカメラで接写したことは「メモを取るのと同じだと考えた」とし、コピーを禁じる約束もなかったと主張した。
会見で草薙さんは、長男の父親の医師(49)が昨年12月、法廷で著書を「暴露本だ」と批判したことは「著書が長男の更生を妨げることはない。読めば自分の立場を客観的に認識できる」と反論。「著書で情報源が特定されたとは思っていない」との認識を示した。
2006年6月の医師宅放火殺人では、医師の妻子3人が死亡、長男は中等少年院送致となった。「僕は…」は07年5月に出版された。奈良地検は同年9月、父親や長男の告訴を受け、関係先を捜索した。
起訴状によると、崎浜被告は06年10月、草薙さんに奈良家裁から預かった供述調書の写しを見せたなどとされる。
秘密漏示罪は正当な理由があれば違法性が阻却される。
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