2009年01月14日(水) 14時56分
大手電機業績が加速度的に悪化、テレビ・半導体不振響き深刻な事態に(ロイター)
[東京 14日 ロイター] 自動車業界に続き大手電機メーカーでも2009年3月期業績が加速度的に悪化する様相だ。ソニー<6758.T>が液晶テレビなどデジタル家電の不振や円高で14年ぶりの営業赤字になる見通しのほか、東芝<6502.T>も主力である半導体事業の業績悪化を主因に7年ぶりの営業赤字に転落する公算が大きい。
米国を中心に海外での薄型テレビなど家電製品の販売が急速に減少し、そこから半導体関連の業績も悪化する連鎖が生まれており、01年のITバブル崩壊時よりも深刻な状況との声も浮上。多数の電機メーカーが赤字転落も含む業績の大幅な下振れリスクに直面している。
<厳しさ増すデジタル家電>
ソニーは海外売上高比率が全体の8割弱と高く、為替相場の大幅な変動に脆弱(ぜいじゃく)な収益構造を抱える。ソニーは、昨年10月に09年3月期連結営業利益が2000億円になると予想した際、09年3月期下半期にドル/円が100円、ユーロ/円が140円と想定していた。ただ、現状の為替レートはこれよりも大幅に円高(ドル90円、ユーロ120円)に振れており、同社が公表している為替変動の営業利益への年間の影響度(1円当たりドルが40億円、ユーロが75億円)から試算すると営業損益レベルで950億円の悪化要因となる。
これに消費低迷による液晶テレビやデジタルカメラといった主力製品の不振、傘下のソニー生命保険の有価証券評価損などが加わる見通しで、08年3月期に3745億円の営業利益を上げた実績から一転、1000億円規模の赤字に転落する可能性がある。赤字見通しが各メディアで一斉に報じられたことで13日の東京市場でソニー株は前営業日比8.88%、195円安の2000円で取引を終えた。ただ、14日は前日比5%高の水準で取引されている。
ソニーのほかには、パナソニック<6752.T>とシャープ<6753.T>の動向が注目だ。シャープは昨年10月上旬、パナソニックは同11月下旬09年3月期の業績予想を下方修正し、営業利益についてシャープが当初の1950億円から1300億円、パナソニックは5600億円から3400億円にそれぞれ引き下げた。13日はパナソニック株が前営業日比7.81%、94円安の1110円で、シャープ株が同9.19%、76円安の751円でそれぞれ取引を終えた。両社とも14日は前日比2─3%高の水準で推移している。
両社はソニーに比べ、売上高に占める海外比率が低く、相対的な円高の影響度合いは薄いが、薄型テレビやDVDレコーダー、デジタルカメラ(ソニーとパナソニック)などの消費者向けデジタル製品の事業環境の厳しさは変わらない。シャープは10月時点で携帯電話の販売不振を下方修正の主因に挙げていたが、事業の不振が携帯電話にとどまると受け止める向きは少なく、大黒柱である液晶パネル・テレビ事業の業績がどの程度の悪化しているのかに関心が集まっている。
パナソニックは、昨年11月時点で、薄型テレビの価格下落率について「年20%くらいでみていたが30%くらいになりそう」(上野山実取締役)と説明。今月9日に開いた2009年度の経営方針説明会で大坪社長は、販売状況の厳しさについて「世界の市場では販売店が資金繰りの関係で仕入れを大きくセーブしている。突然のキャンセルがあったり、昨年(11月)も(米大手家電量販店の)サーキット・シティー<CCTYQ.PK>が経営破綻するといった事例が散見される」などと語った。大和総研アナリストの三浦和晴氏は、パナソニックやシャープ、三洋電機<6764.T>など家電各社の08年度業績予想について「第3四半期(08年4─9月期)決算にかけ、全社が下方修正になるのではないか」と見通す。
<家電・自動車不振が半導体を直撃>
デジタル家電の不振は、その中核デバイスである半導体事業に直接波及する。大和総研アナリストの佐藤雅晴氏は、昨年12月29日のリポートで、09年3月期の大手電機の半導体事業の営業損益について、東芝が1790億円、NECエレクトロニクス<6723.T>が410億円、富士通<6702.T>が550億円とそれぞれ赤字になると予想。同氏は、日立製作所<6501.T>と三菱電機<6503.T>が共同出資するルネサステクノロジについても09年3月期は900億円程度の当期赤字を予想しており、その場合、日立と三菱電に投資損失が生じる。半導体は、エレクトロニクス分野だけでなく自動車など幅広い工業製品の動向に影響を受けるが、今は自動車産業が不振を極めていることも深刻さの度合いを深めている要因になっている。
大和総研の佐藤氏は、国内電機大手の半導体事業について「もともと構造的な問題があったところに、需要が一気に落ち込んでいる。稼働率や受注も大幅に落ち込んでおり、電子部品と同様、厳しい状況になっている」と語る。携帯電話やパソコン、ハードディスクドライブなども低迷が長引きそうだ。
また、富士通とNECでは企業や官公庁からのシステム構築やIT(情報技術)サービスの受注、三菱電では自動車産業向けや薄型パネル製造向けの産業機器といった比較的収益性のよい事業も、経済環境の悪化に伴い受注の延期や落ち込みが増えることも予想される。
13日は、日立が前営業日比7.01%、26円安の345円、東芝が8.55%、36円安の385円、三菱電が7.12%、39円安の509円、NEC<6701.T>が7.51%、22円安の271円、富士通が7.29%、31円安の394円でそれぞ取引を終えた。14日は三菱を除く各社が前日比プラス圏で取引されている。
(ロイター日本語ニュース、浜田 健太郎記者、平田 紀之記者;編集 田巻 一彦)
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